素潜り旬

TITANE/チタンの素潜り旬のレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
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世界一マッチョなゾンビーズ『She's Not There』のかかり方で、うわあすげえ気持ちわりい・・・。と思いながら観ていた。どこまで悪趣味なんだこの監督は。だって、父と息子の物語で一番やばいだろう、これは。家族生活という共同作業(あるいは共犯関係)を続けてきたふたりの最後の共同作業として出産シーンがあるだなんて信じられない。が、産まれてきた赤子のディテールが絶妙でよかった。もしこの世の終わりのような怪物が産まれてきようものなら、俺は走り出していただろう。地獄みたいな顔をして。そうならなかったことは、この映画の完成度においてかなりポジティヴに捉えて良いと思う。悪趣味なだけではない。バランス感覚。カーセックス(この言葉の最高の使い方である気がする)もそうだ。見せる部分と見せない部分。これが惹きつける。妊娠の腹のディテールも『鉄男』みたくバッキバキになっておらず、どちらかというとサイボーグのようで、格好良く見えるのだ。そしてここまでエロさのない乳房の描き方は初めて見た。セクシーなダンサーを頂点にだんだんとエロさをなくしていく乳房は、母になっていくがゆえにグロさを備えた安心感に変わっていく。この乳房の変貌を描くために俳優は常に脱ぎ続けていたが、それに慣れていくわけではない。息子でありながら母となるさまを見せつけられるようで、俺たちを驚かし続けるのだった。
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