素潜り旬さんの映画レビュー・感想・評価

素潜り旬

素潜り旬

異人たち(2023年製作の映画)

-

アンドリュー・ヘイ『異人たち』を観て、泣きすぎて混乱している。アンドリュー・スコットとポール・メスカルが共演だからと楽しみにしていたが、それ以上のもの、俺自身の心の揺らぎが苦しかった。生涯のベスト映画>>続きを読む

No.10(2021年製作の映画)

-

『No.10』は濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』のような演劇的文体でドラマ性を明らかにする手法から〇〇(ここを書いてしまうと観る意味ないくらい)への飛躍が凄まじく、本当に公式サイトに載っている以上の前>>続きを読む

デ・ジャ・ヴュ(1987年製作の映画)

-

気づいたら入り込んでいるというのはなんて優美なことなのだろう。そしてそれが幻想で終わるのではなく物的証拠としてレコーダーに残されている。ドライヤー『吸血鬼』のアラン・グレイを思い起こすようなジャーナリ>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

-

男女の24年の決定的な場面は12年区切りに画面内で起こっていて都合良いなあと思うし、話すのは前世や来世のこと(とにかく縁ってことなんだけれど)ばかりでやきもきする。ただその縁の象徴として存在する主人公>>続きを読む

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)

-

『インフィティ・プール』観た。自分のクローンがブチ殺されるのを観るのが作家として途轍もない体験となるのは分かるが、そこから彼が(彼らが)なにも生み出さず、ただ狂気としてそこにいるだけで、作家としてどう>>続きを読む

青春ジャック止められるか、俺たちを2(2024年製作の映画)

-

木全支配人を演じる東出昌大、芝居凄くて顔が変わっている瞬間(若松監督にピンクの上映やめたいというシーン)があり、本当にびっくりした。若松監督を演じる井浦新が磁場として「いる」から青春群像劇のそれぞれの>>続きを読む

ゴーストバスターズ/フローズン・サマー(2024年製作の映画)

-

溶けたらいいね、昔々のこと。なんて話は前回で終わりで、現在から未来へ向かう話。それを新旧メンバーでやっちゃう。この熱さ(おまけに仲良くなるゴーストはメラメラしている)、敵は冷たい、フローズン・サマーと>>続きを読む

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)

-

ナン・ゴールディンの人生と抗議運動、スライドショー作品と語りが交互に描かれ、そこで本質的に横たわる死が、横たわるナン・ゴールディンに重なり、いま行動することで起きる活動の成果を導く。逃走するサックラー>>続きを読む

アワーミュージック(2004年製作の映画)

-

2020
鑑賞時間の耐透過性を考えるたびに『アワーミュージック』を思い出す。

2024
ゴダール自身が監修したデジタルリマスター版『アワーミュージック』めちゃくちゃ鮮明だった!シナリオ採録に注釈まで
>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

-

エキスポのIMAXで観た。T・S・エリオット『荒地』、ベニー・サフディ、フローレンス・ピュー、ヒューイ。

『オッペンハイマー』の一人称で書かれた脚本って信頼できない語り手だろうなと思っていたら案の定
>>続きを読む

右側に気をつけろ(1987年製作の映画)

-

『右側に気をつけろ』でのゴダールみたいな車の乗り方しかできないから、誰の車にも極力乗らないようにしているし、ゲーテの最期の言葉を勘違いしたままでいる。「いい加減にしろ!(もっと光を!)」そんな影響から>>続きを読む

一分間タイムマシン(2014年製作の映画)

-

SFな展開とオチよりもジム・キャリー的芝居のほうが気になった。

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)

-

主題歌が倖田來未なこととパンフレットが1400円なことにびっくり。エンディングの引き延ばしによって堕落していく様を見せるっていうのは、天才における結末としてありがちなうえに最後の切断とその距離感が微妙>>続きを読む

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

-

エキスポのIMAXで。前作はタイミング合わず家で観たから全然楽しめなかったが、今回は最高の環境だからもう砂虫が出てくるところ全部ヤバい。砂漠を叩いて砂虫を呼び寄せるところで踊れる。というか振動で椅子か>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

-

1.ヴィム・ヴェンダース『PERFECT DAYS』出町座で英語字幕付きを観た。三浦友和が出てきてからラストの役所広司演じる平山の表情まで完璧でこれはやばいぞ…!となったのに、そのあといらない画が二つ>>続きを読む

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

-

タイミング合わず家で観たが、そのせいで何がいいんだこれ…と思った。結局、IMAXで観ること、続編を観ることによって価値が増す映画なのだろう。単独で楽しむにはジェイソン・モモア(彼の芝居とめちゃくちゃ合>>続きを読む

小説家の映画(2022年製作の映画)

-

ホン・サンス『小説家の映画』をシネ・ピピアで。モノクロからカラーへと変わるというありがちな展開もホン・サンスにかかればゴダール的色調(コンピューターでイジリまくった変にパキっとしたオレンジがかったアレ>>続きを読む

二十代の夏(2016年製作の映画)

-

『マリの話』を観た勢いそのまま『二十代の夏』もあわせてAmazon Prime Videoで。

爆笑が続いた。終盤の「お客さん笑ってたもんなあ」がかなりメタで、やられた気がした。とんでもない映画、そ
>>続きを読む

マリの話(2023年製作の映画)

-

高野徹『マリの話』を出町座で観た。詩の装置としての使い方や構成、映画自体がホン・サンスっぽいというだけでなくてピエール瀧のクォン・へヒョ味よ!第四章の「マリの映画」パート、男が萩原朔太郎「愛憐」を暗誦>>続きを読む

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)

-

『ドッグマン』観た。誰でも知っている曲(「So What」とか!)が流れて、ドッグマンの誰も知らなかった物語が精神科医との対話によって明らかになる構造に、シェイクスピア劇が加わって「生きるべきか死ぬべ>>続きを読む

映画ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー)(2024年製作の映画)

-

今年も妻と5歳の娘とドラえもんの映画に行ってきたけれど、去年のザルドス的SF(のび太がショーン・コネリー)とノーラン風味のカフカドラえもん救出劇(冒頭の虫がドラえもんだったなんて!残酷な…)に比べたら>>続きを読む

ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争(2023年製作の映画)

-

『ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争』について考えだしてうんざりする。まず、スラッシュの位置が変だし『遺言/奇妙な戦争』ですら良くない。ゴダールと遺言のあいだにスラッシュを入れるなら「can>>続きを読む

マダム・ウェブ(2024年製作の映画)

-

エンディングで「夢中人」が流れて最悪だった。笑 勘弁してくれ。この曲を流すのにも大いなる責任が伴うはずで、どの文脈があればこんなことができるんだ…と思う。エゼキエル・シムズの無駄遣いもキツいし…トーテ>>続きを読む

幻を見るひと 京都の吉増剛造(2017年製作の映画)

-

吉増剛造の武器「The Poet’s Golden Hammer」彼が常に持ち歩いているハンマー、その原体験である、石を割ったら出てきたウニが空気に触れて一瞬で風化したというこれぞポエジー、彼のポエジ>>続きを読む

WILL(2024年製作の映画)

-

20240217
元町映画館にて舞台挨拶付きを。

最近のバラエティやニュース番組での東出昌大の出演はほぼ観たが、ゴシップ的な扱いや芸人のふざけた態度にうんざりした。『WILL』は確実に違うだろうと信
>>続きを読む

アナーキー・インじゃぱんすけ 見られてイク女(1999年製作の映画)

-

アリ・アスター『ボーはおそれている』より家に帰ってすぐ観た瀬々敬久監督『アナーキー・イン・じゃぱんすけ』のほうが面白かった!冒頭で提示される結末とは違う展開を迎える監督のアナーキーさ(は『菊とギロチン>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

-

単純につまらないし、過剰にズラされることでシラケる。というより、何もかもが過剰。カフカ的なこと、フロイト的なこと、それらがやりたいにしても、彼らが別に過剰にやれと書いているわけではなく、その過剰さがア>>続きを読む

アニエスの浜辺(2008年製作の映画)

-

冒頭の撮影クルー紹介、その部分の語りだけが俺を惹きつけ、あとはなぞるような素振りをしてみせるだけだった。

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)

-

このアントナン・アルトーの立ち振舞いなり様相を俺は覚えるべきだと思う。詩人として、だけではなく、スクリーンに映しだされる詩人として。

あえかなる部屋 内藤礼と、光たち(2015年製作の映画)

-

ひとりの作家を追うドキュメンタリーから劇的に変わる瞬間、作家性を失い、市井の人が現れた時の陳腐な喋り(CM撮影が行われている)には、もう引き返せないどうにもならなさがあり、その諦観が徐々に本当のことへ>>続きを読む

秋の理由(2015年製作の映画)

-

正直、メイキングのほうがよかった。動く福間健二、福間組にいる福間健二、ジャージにリュックを背負い演出する彼を観られるのは本当に貴重で、それはYouTubeなどにあがっている世界各国の映画における特典映>>続きを読む

王国(あるいはその家について)(2018年製作の映画)

-

シネ・ヌーヴォで『王国(あるいはその家について)』観た。リハーサル、まだ何度でもやり直せると思いながら反復することによる、身体の変容、というより、戻したり調整もあるから可変であり移動なのだけれど、ただ>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

-

結末に触れてしまうから詳しくは書かないけど、この瞬間に誰を、何を映すかの選択が完璧過ぎるし、その通史的ともいえるクローズアップには過去が映りまくっていて、ちょっと怖く言うと見える、みたいな感じ。それは>>続きを読む

奇跡(1954年製作の映画)

-

カール・テオドア・ドライヤー セレクション vol.2で『奇跡』を観た。詩人で劇作家のカイ・ムンクによる原作の劇構成を忠実に再現しようとしているのなら、その詩性はどこにあるのかと長回しによって生じる余>>続きを読む

ガートルード/ゲアトルーズ(1964年製作の映画)

-

シネリーブル梅田「カール・テオドア・ドライヤー セレクション vol.2」で『ゲアトルーズ』を観た。詩人が登場するから観に行こうかなとそこまで期待していなかったが良すぎた。自分のところへ戻らないゲアト>>続きを読む

吸血鬼(1932年製作の映画)

-

アップリンク京都、カール・テオドア・ドライヤー セレクション vol.2で観た。主役の青年アラン・グレイを演じるジュリアン・ウェストは貴族でこの映画に出資もしているらしいが眸の役割で、老人たちが静かに>>続きを読む

>|