猫脳髄

マンハッタン殺人ミステリーの猫脳髄のレビュー・感想・評価

3.6
前作「夫たち、妻たち」(1992)でミア・ファローと決裂したウディが急きょキートンを代役にしたと言うが、この役はやはりキートン以外考えられない。ウディが心底楽しそうで生きいきしている。ただその興奮のせいか、2人のシーンがいささか騒がしい。

また、ミステリーという緻密さに対してプロットに穴が目立ち、そこを騒がしさで多少誤魔化したのではないかと疑ってしまう。再鑑賞時も評価変わらず。ウディのミステリーは「マッチポイント」(2005)まで成熟を待つことになる。

(2023.3.12 再鑑賞 ★3.6→3.6)
ウディ・アレンとダイアン・キートンの黄金コンビが倦怠期目前の夫婦を演じたスラプスティック・コメディ。知り合ったばかりの隣人の間に起こったかもしれない殺人事件をめぐって、夫婦間のソリの合わなくなったキートンが素人探偵にのめり込み、友人たちを巻き込んでアレンがアタフタすると言う筋立て。キートン役は元はミア・ファローだったようだが、アレンとのゴタゴタでキートンとの往年のコンビが復活したのは僥倖だった。

ただ、ミステリ・パートの作りがどうも雑然としている。クライマックスの劇場シーンで、オーソン・ウェルズ「上海から来た女」(1947)のミラーハウスのシーンが重ねられるなど凝った演出がある一方で、「磁石にくっつく死体」と言った妙な描写があるなど、粒度が合っていないのは残念。

もっとも、主題は熟年夫婦の危機とそのユーモラスな掛け合い、軽妙なセリフ回しだろう。その点は満点だが、やはり全体のバランスを失した感はある(3/50)。
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