マインド亀

ジョン・ウィック:コンセクエンスのマインド亀のレビュー・感想・評価

4.0
ゲームを映画的再構築!観客とジョンの一体感が増したシリーズ最高傑作!

●シリーズの2作目『チャプター2』でチャド・スタエルスキ単独監督体制になって以降、襲い掛かる殺し屋だけが構成する、ある種強迫観念的空想世界観が突出してドライブしていったジョン・ウィックシリーズ。
今回はなんとシリーズ最長の169分!いやこれはちょっと長すぎじゃないか?と観る前から随分ゲンナリしておりました。
しかしながら本作、その上映時間にこそ意味がある、なかなかの珍しい映画だと思いました。

●蓋を開けてみれば本作、ドンドンと回を増す事にキャラクターや世界観のバックグラウンドの説明を削ぎ落とし、極限までシンプルに主人公ジョン・ウィックがひたすら襲い掛かる敵を倒し、攻撃され、体力を消耗していくマラソンの様な映画でした。
今作はジョン・ウィックと観客との一体感がテーマではないかと思うのです。
ジョン・ウィックが常に「イヤァ…」「イェェ…」とウンザリした表情で敵を殺していくのですが、この長時間の上映時間によって観客はジョン・ウィックの疲労感と一体感を得ることができるのです。これはさすがになかなか無い体験ですね。
そして、敵の一撃で振り出しに戻る体験は横スクロール格闘ゲーム、そして部屋と部屋を索敵しながらドラゴン・ブレス弾をぶっ放す爽快感は『香港マサカー』のような天井見下ろし型アクションゲームの操作感のように、まるでゲームを操作するように観客がジョン・ウィックと一体となるシーンも多かったのです。
そう、それぞれのアクションシーンがまるでゲームのステージのような感覚。最初は砂漠で敵を追いかけるステージですよ、次は車を避けながら戦うステージですよ、次はクラブで踊り狂う客の中で中ボスと戦うステージですよ、そうやってバリエーション豊かなステージをクリアしていって、最後はラスボスとの一騎打ち!
つまり一つ一つ観客を飽きさせないアイデアを練ったアクションの釣瓶打ちなんですね。
本作はまるでゲームクリアまでに要する時間として長尺の上映時間が必要だったのかもしれません。そうやってあらゆる障害を乗り越えた先のジョン・ウィックの安らぎ…観客は放心状態で手に握りしめたコントローラーを遂に放すことが出来るのです。

●今作はさらにスーツの防弾技術が上がりまくって普通の距離から銃で撃ち抜いても全然誰も倒れません。そこで中だけではなくナイフや弓矢といった古典的な武器や、至近距離から顔面への銃撃など、接近戦〜中距離でのアクションが重要になってきます。一発で死なない、いわば「ガンフー」の戦い方がゲームっぽさに拍車をかけています。そして、今のところ観たことのないアクションとして成立しています。
さらに敵の銃を拾いまくって戦うという今までのジョン・ウィックの戦いかたに加えて、彼の唯一無二の専用武器であるピットヴァイパーがさらにゲームで言う『伝説のつるぎ』のようなもので、わざわざ落としたピットヴァイパーを拾うシーンがあるくらい、彼にとって重要な最終兵器の獲得が、物語のクライマックス感を盛り上げていくのです。

●そしてもはや説明不要ですが、アート作品のような美的センスの数々、深い映画的教養を思わせるあらゆる引用の数々、言うまでもなくドニー・イェンと真田広之の伝説的タッグ、リナ・サワヤマの素晴らしい好演……など語り尽くせないくらい観どころがたくさん!あ、トラッカーの「ワン・フー」も良かったですね。犬好きなジョンによる胸熱な伏線に感動!(ちなみに、トラッカーの、ジョンの居場所をすぐに見つける能力ってなんだったんでしょうか、説明ありましたっけ?)

●今回はIMAXと迷った挙げ句、ドルビーシネマで鑑賞したのですが、かなり当たりだと思いました。夜の風景がバキッと綺麗ですし、何よりも音がよい。本当に銃撃の音が腹に響く感じで、なかなかのオススメです。是非、ドルビーシネマをやってるうちに体感いただくことをオススメいたします!
マインド亀

マインド亀