Violet

ヤクザと家族 The FamilyのVioletのネタバレレビュー・内容・結末

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

見終わった後にずしーんと来た。
藤井道人監督の作品である『新聞記者』然り、本作も大きな問題提起が掲げられていた。

ヤクザを辞めても5年間は人間として扱われないという、「5年ルール」。
口座も、保険も、家も、携帯電話さえも契約できない。
さらに自分が元ヤクザであるがために、自分だけではなく周囲の人々をも巻き込み、不幸にしてしまう。

徹底的な社会からの排除。
細野、由香、彩。
今まで真摯に働いてきたにもかかわらず、元ヤクザというだけで、ただ賢治と一緒にいただけで仕事を辞めさせられ、社会から排除されるこの世の中。

昔ながらの義理と人情に重きを置き、裏で発生するトラブルを収める「必要悪」としての柴崎組。
かたや覚醒剤や臓器売買など手段を選ばない「絶対悪」の侠葉会。
これを一括りに「ヤクザ」とすることが正しいのだろうか。
本作中では無慈悲にも絶対悪である侠葉会が警察と手を組み生き残っていた。

本作はヤクザを肯定する映画ではない。
しかし、ヤクザであるという事実だけで一括りにし、居場所を奪い、人権を否定する。
このやり方を見直すべきではないかと、本作は訴えているのだ。

▼キャスト
綾野剛、舘ひろし、市原隼人、磯村勇斗、北村有起哉、岩松了、豊原功補、尾野真千子。役者がみんな素晴らしすぎ!よかった!
やっぱり綾野剛はすごい....20年間の賢治を1人で演じたが、その演じ分けは見事としか言いようがない。
話し方や表情や声のトーン、目つきを微妙に、だけど決定的に変えている。すごいな〜。
出所した賢治が街や組の変化を実感していくシーンは切なかった。
市原隼人演じる細野の「あんたさえいなければ...!」っていう涙と、その細野を抱きしめて「ごめんな」って謝る賢治の姿が苦しかった。

由香のことを無理矢理押し倒すシーンは一見やばいシーンだと思うんだけど、賢治の不器用さがにじみ出ていてなんかちょっと笑っちゃった。笑 由香にバシバシ叩かれても、彼女には絶対に手をあげることのなかったところから、賢治の優しさが垣間見れる。

ドラマシリーズ『時効警察』での岩松了と豊原功補の印象が強すぎて、「こんな怖い役やってる!!!!!」ってなった😂

▼賢治の服装
ヤクザになる前の賢治は真っ白なダウンを着ており、ヤクザになってからは黒のスーツを、そして刑務所から出所してからはグレーのスーツに身を包む。
ヤクザを辞めても真っ白には戻れない、そんな賢治の状況を彼の身に纏う服の色彩で表しているのも秀悦。


ただ。時代は変わるのだ。
それはみんなに等しく訪れる変化であり、それで困っているのは決してヤクザだけではない。
わたしの見方が間違っているのかもしれないけれど、最近見た作品の言葉を思い出した。
「変わっていく時代を恨んではいけない。
そんな時は「まあしょうがない」と一旦諦めて、そしてその中でどうやって生きていくかを考えるのだ。それが大切だ。」
人を殺してもなんにもならない。
ヤクザがどうこうではなく、わたしはやっぱり人を殺すことに関しては何があっても肯定できない。


綾野剛のヤクザ全盛期と出所後のセンター分けが超かっこよかった.....😭❤️
Violet

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