ブラックユーモアホフマン

ヤクザと家族 The Familyのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
4.1
ホモソ映画大好きだからなぁ。ツボつかれてしまったなぁ。

同時期に公開され、近い題材を扱った作品として比較されがちな『すばらしき世界』と本作でしたが、僕はこちらの方が、傑作!とまでは言わずとも断然面白かったです。

初・藤井道人。

なんかどうも食指が伸びなくて『新聞記者』すら観てなかったけど、今度ちゃんと観てみよう。

『すばらしき世界』と比べて、タイトルのダサさはこちらも大概なんですけど、キャスティングのセンスは凄くいい。
全体的に、あ、その人をここに?と、少し意外な配役。舘ひろしがヤクザの親分とか、市原隼人が主人公の右腕、とか。見る前からイメージができてしまう配役、つまり安パイな配役の映画が多いなかで、これは良いキャスティングだった。

両作に共通するキャスト、北村有起哉さんはどちらも最高だった。元々好きだったけど更に好きになった。舘ひろしの奥で立っている姿なんて、ちょっと成田三樹夫みたいだと思った。
そして康すおんさんも、こちらの方が輝いてた。

二ノ宮さん良かったなぁ〜。すいません、早く『枝葉のこと』観ます。
『すばらしき世界』が梶芽衣子、白竜というキャスティングに対して、こちらは菅田俊さんですよ。キャスティングの方(おおずさわこさん)がVシネまでよく把握してるのか。ハマってたなぁ〜。
あと個人的に良かったのは駿河太郎さん。チンピラルックスが似合っててすごく良かった。

舘さんは『アルキメデスの大戦』といい、本作といい、「あぶでか後」と言うべきか、最近の役すごくいい。話し方が特徴的過ぎて(上田晋也のモノマネも思い出して)ちょっと笑っちゃったけど。
綾野剛はいつもすごくいいです。当然ながら超カッコよかったし。

三時代で画面サイズを分ける意味は、観る前はあるのか?と疑問に思ってたけど、観た後はまあまあ納得。だんだん肩身が狭く、世界が小さくなってく感じ。『グランド・ブダペスト・ホテル』とは全然意味合いが違う気がする。

MVみたいな映像が少し気になったりもしたけど、監督の個性だと思えばアリ。
令和のヤクザ映画として、昭和のヤクザ映画とはまた別のものとして、アリな映画だった。

磯村勇斗たちが金属バット持って雨の中を歩いてる絵面は『牯嶺街少年殺人事件』を思い出した。

とにかくホモソな人物の関係性を見ているだけで永遠にご飯食べれるっていう映画。でもヤクザ映画ってそもそもそういうもんじゃんね。『すばらしき世界』と比べて明らかに”中身”はない。でもその方が映画としては面白い。

(21/07/05追記:
『すばらしき世界』と同じように、令和の現代におけるヤクザ・元ヤクザの人権のなさ、生き辛さには言及しているものの、あくまでそれはドラマの背景であって、『すばらしき世界』のようにそのものズバリが映画全体のテーマとして前景化してはいない。そしてその方が僕は圧倒的に正しいと思う。)

強いて言えば、令和元年編はちょっと長く感じた。10分くらい。スローモーション多用し始めてちょっと飽きた。

【一番好きなシーン】
・車内からのあの長回し。韓国映画みたいだなと思ったり『トゥモロー・ワールド』を意識してるかなと思ったり。三人の演技のかけ合いも素晴らしい。
・北村さんと殴り合うところ。