アキラナウェイ

ヤクザと家族 The Familyのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
3.6
もう、ヤクザ映画は時代劇的な立ち位置になるのかも。

自暴自棄に暮らしていた少年が暴力団組長と関わり、やがて極道の道へ—— 。

ヤクザとその家族の絆を、移り変わる時代と共に1999年(平成11年)、2005年(平成17年)、2019年(令和元年)と3つの時代に分けて描く。

1999年。覚せい剤が原因で父を亡くした山本賢治(綾野剛)は、柴咲組組長の柴咲博(舘ひろし)に認められ、ヤクザの世界に足を踏み入れる。

2005年。柴咲組で名を上げていく賢治は、自分と似た境遇で育った工藤由香(尾野真千子)と出会う。対立する侠葉会との抗争で、賢治は逮捕される。

2019年。14年間の刑務所暮らしを終えた賢治だったが、柴咲組の様子は暴力団対策法の影響で激変していた—— 。

金髪で、ナイフの様に尖っていた10代。黒髪で、暴力団組員としての貫禄もついてきた20代。穏やかな笑顔まで見せる様になった30代。

綾野剛が年代別に見せる演技の(幅ではなく、時間軸に合わせて深まる)奥行きはお見事。

ただ1つ言わせて!!

冒頭、賢治が原付で登場するシーン。真っ白のダウンジャケットを着ているけど、縦の折り目が付いている=新品の衣装を着ているのがモロわかり。そこは着古した感を出して欲しい現実主義な僕。こういう細かい所、大事デス。

組長の割に温厚な柴咲を演じた舘ひろしや、その他脇を固める市原隼人、磯村勇斗ら若手も良い演技。

色味を抑えた暗めの映像は、なるほど監督藤井道人の「新聞記者」を彷彿とさせる。

世知辛く、ほろ苦い。
特に令和に入ってからの、ヤクザの生き辛さよ。浦島太郎状態の賢治が感じる、14年の重みが観ているこちらにものし掛かる。

「俺みたいになるなよ」と声を掛けた少年が、自分の様になっていく。時代の変容に合わせて、その時代に合ったはみ出し者になっていく遣る瀬無さ。

ヤクザと関わったという過去があるだけで、社会から排除されてしまうかつての賢治の恋人由香の姿も居た堪れない。

可哀想。
可哀想だけど致し方ない。

ダメなんだって。
ヤクザになったらダメなんだって。

どんな事情があったって、それは誰かを踏み躙って、何かを奪い取って、踏ん反り返って虚勢を張る、文字通り反社会的な存在なのだから。

作品として面白く鑑賞したし、何とも言えない余韻も感じ取ったけど、共感も同情も致しませんよ。その生き方にははっきりとNOと言います、わたくしは。

「孤狼の血」はヤクザをエンタメに昇華していたと思うので楽しめた。ドラマ的に描いたという点では「すばらしき世界」に近い。それでも「すばらしき〜」よりもヤクザ時代の悪行を見せてしまっている以上、その上で現代の描写がどうも同情を誘っている様に感じてしまう。以上の事から、若干評価は下げます。