はなたまご

太陽がいっぱいのはなたまごのレビュー・感想・評価

太陽がいっぱい(1960年製作の映画)
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 血で染まった手を巧妙に隠しながら、束の間の悦楽と遁走に身を委ねる男を描いたサスペンス作品。
 俳優、アラン・ドロンの鈍く怪しげに光る瞳がとにかく強烈で、瞳の色が何色にも変わっているのではないかと思わせるほどの強い感情を伝えてくる。特に終盤、友人の婚約者の手にキスをする誘惑のまなざしはさながら鷹のような鋭さだ。映画の幕引きの仕方も秀逸で、彼が今後受ける報いの薄暗さがイタリアの太陽という対照的な明るさによって強調されている。
 「太陽がいっぱい」という題名からは想像も付かないような不穏な映画だが、その「目」に当てられた者はきっと動きを封じられることだろう。