ししまる

亡国のイージスのししまるのレビュー・感想・評価

亡国のイージス(2005年製作の映画)
2.9
2005年の軍事サスペンス。福井晴敏の小説(1999)を原作としている。東京湾沖で訓練航海中だったイージス艦いそかぜを、副長の宮津(寺尾聰)と某国対日工作員ホ・ヨンファ(中井貴一)が共謀して乗っ取り、ミサイルの照準を東京に合わせる。政府は米軍の特殊焼夷弾でいそかぜを攻撃しようとする。いそかぜ先任伍長に真田広之、首相に原田芳雄。防衛省情報局(架空)内事本部長役に佐藤浩市。
冒頭の産経新聞クレジットから言いたいことは推して知るべしで、それに異論はない。作品自体は豪華キャストでハリウッド的。半面、荒唐無稽でリアリティーさは欠いており、展開がゆっくりなので冗長さは否めない。「時間かかるのか?今日中に選挙区に戻らなきゃいけないのに」(首相)。最後は手旗信号。
いそかぜは、はたかぜ型護衛艦で実際には計画が中止された3番艦という設定。いそかぜの名の軍艦は大日本帝国海軍の磯風型駆逐艦磯風、陽炎型駆逐艦磯風に続き3代目。劇中のいそかぜは、海自こんごう型護衛艦の3番艦であるDDG-175 護衛艦みょうこうが用いられている。静岡県相良町の浜辺に三億円かけてイージス艦のセットも製作。
本作の企画が1999年、防衛庁に持ち込まれた際「現職の海自艦長(本作は副長に変更)が叛乱を起し、最新鋭護衛艦を乗っ取り、政府を脅迫する内容に一切協力はできない」と強く拒否された。
2度目の協力要請では、原作を3回読んだという当時の石破茂長官が事務方に再考を促すなどして、防衛庁の協力が実現した。石破氏は後日のインタビューで「広報課長が『自衛隊に撮影協力の依頼があったので断りました』と言うので、あぜんとしましたよ」と回顧。課長は原作を読んでおらず「不名誉な映画に我々が協力することなんてできません」と説明したという。石破氏は「危機が起きた時に日本がこうなってしまうということが、実に精緻に書かれている。書籍の帯には「よく見ろ日本人、これが戦争だ」(劇中ではヨンファのセリフ)と書いてある。まさに、その通りだと思いましたよ」と語っている。
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