おお、これは傑作じゃないか。
なんといっても近年の邦画の中では稀に見る人物描写のバランス感。
これは原作からそうなのかもしれないが、「誰も悪くない」「誰かを悪者にしない」しっかりしたキャラクターの描き方。つまり、極めて知性的な、といってもいいんだが。
この映画(が良作であること)は、石橋静河がはじめて水原希子をカフェに呼び出す場面で決定的になったと思う。あそこでこの映画の言わんとするところ、その価値観が明確になったというか。
あそこで、数多の凡作のように「一方的に浮気を責める」ようなことがあったら、終わっていた。逆にいえばあそこの場面に至るまで「そっちの映画じゃないよね?」とヒヤヒヤして見ていたんだが。
また同時に、多分にフェミニズムな映画ではあると思うんだが、決して"プロパガンダ"にはなっていないところも大きなポイントである。
あと、なんといっても綿密な取材に基づいているであろう、一つ一つの描写の、丁寧さの積み重ね。それがこの映画に一つの気品を与えている。
特に金持ちたちの生活なんてほんとに描写するのが難しいだろうが、そこも十分なリアリティを感じられるというかね。
てか石橋静河マジでいいな。好きになってしまった。
ちょうど最近『乱』を見たときに初めて知ったんだが、石橋静河って、原田美枝子と石橋凌の娘なんだな(みんな知ってた?)なんか、そのサラブレッドの感じもバチバチにハマっていた。
しかし岨手由貴子氏って『そこにいた男』の脚本だったんか...とそれ観て微妙な気持ちになったんだが、とりあえず今後には期待である。