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青春の殺人者のparsifal3745のネタバレレビュー・内容・結末

青春の殺人者(1976年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

 実際の事件、佐々木哲也事件を基にしているが、二人の殺人については、本人は否認していたらしい。成田空港の建設反対運動が出てくる1976年の作品。
 主人公の父母は苦労して身一つからタイヤ工場を立ち上げ、贅沢一つしないで息子を育てている。息子は真面目だが、風俗に勤めていたケイ子と付き合い、深い関係になって歯車が狂いだす。
 ここでのケイ子(原田美枝子)は、はすっぱな感じでなく、あどけなく綺麗な顔立ち、豊満な体つきをしている。(当時17歳で裸体を晒すのが考えられない)その時の感情に素直で、深い考えなどなく相手に流されやすいようなキャラクター。それに対して順(水谷豊)は、頑固で、無計画、直情的で、甘ったれ、母に甘やかされて育ったかのよう。
 なぜ、父親を殺したのか? いつも父親は与えていたものを取り返す。
自分は、ケイ子が素晴らしい伴侶だと思ったら、イチジクの木を盗んで食べたという嘘をついたり、母親が招きこんだ男に貞操を破られたことが発覚。父に好奇心で自ら引き込んだのではと言われ、自分が大切に思っていたものを取り上げられたと思い、逆上、めった刺しをして殺したように描かれていた。
 父親を殺した後の母親との争いが狂気。父殺しを発見して、息子を責めない、自分はこれを待っていたような気がすると。息子の自首を思いとどまらせ、死体の処理を謀議、その後の逃亡生活に夢を抱いたかと思いきや、死体となった夫にやさしい感情になったり、息子が最初から両親を殺害するつもりだったかと疑って殺そうとしたり、自分を殺してと哀願したり。市原悦子ゆえにその狂乱ぶりが可能だった。
 その後、順とケイ子の絡み、死体遺棄、スナックに戻っての騒動、自殺騒ぎの経緯は、最初はケイ子にばれないように、巻き添えを食わせないようにと考えていたが、徐々にケイ子がいたから自分も影響を受けて、刹那的、衝動的に変わっていって、父や母が築いてきた幸せと自分の未来を、奪ってしまったことに気づいたという描き方だった。
 事件は理由なき殺人と世間を賑わしたようだ。この映画もインパクト大。学生運動は、大人やその時代が押し付けてくる価値観や体制に対して若者が抗ったもの。そのエネルギーの向かい方が、自分の親に向けられた時、こんな事件が起こってしまうというメッセージか。確かにこの頃、親殺しが、ニュースの話題となっていた記憶がある。
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