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GAGARINE/ガガーリンのNonsonのレビュー・感想・評価

GAGARINE/ガガーリン(2020年製作の映画)
5.0
 パリ郊外にある「ガガーリン団地」。ソ連宇宙飛行士ガガーリンが実際に訪れたことがその名の由来らしい。そしてガガーリン団地打ち壊しに反対する青年が、この映画の主役。
 青春映画と銘打たれていて少し気後れを感じていたのだが、見てみると、青春以上にSF作品だ。青春という言葉に同じような考えを持つ方がいればそこは安心していただきたい。

 団地打ち壊し自体は現実に起こった事で、24年のパリ五輪に向けての話だと思われる。建物の老朽化自体は事実なので、理由がどうあれ解体の時が来たということだ。そんなことは判っていても納得できない。それがこの映画を通しての動機だが、結果として青年は全てを奪われる。
 他人や土地との結び付きを喪い、関係性の重力を失った青年は、団地を宇宙船に改造して立て籠る。彼があの突拍子もない宇宙船計画で一番得たかったものは、重力なのだと思う。他の感想でもあったが、これが彼にとっての「たった一つの冴えたやり方」。自己犠牲に陥ることはないが、誰かに自分を見つけてもらう為の、決死の方法だったのだ。他者との関係で結ばれる重力がある。重力がなきゃ、トイレも水を飲むことだって大変だ。回転運動を続ける事で、一人じゃないと感じていたい。
全体的に非常にロマンティックでSFの髄を感じる作品だったと思う。
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