おすし

Summer of 85のおすしのレビュー・感想・評価

Summer of 85(2020年製作の映画)
4.0
自分には無いのだけれど、
その無い思い出を思い出してしまうような
誰かと共有して、その思い出話をしたくなるようなお話だった。

アレクシがあの6週間を秒数に言い換えるところ、私もよくしてしまう(特に楽しみな予定が始まるまでカウントダウンとして)ので親近感が湧いた。数字が大きければ大きいほど価値も大きくなる気がしてしまう。

綺麗な薄青の海、白い肌、太陽の光
そのまま目に入ると美しくて眩しくて、すこし困ってしまいそうな景色を粗めのフィルム映像で懐かしさを足して見せてくれたのがとても心地よかった。

理想の友達への幻想を抱くアレクシ
壊れるかもしれない幸せや楽しさが怖く、刹那的な依存先を増やし続けるダヴィド
本当の友達に息子(そして自身)の救済を求めるダヴィド母
自由に生きることを良しとする、過去におじさんが"すき"だったアレクシ母
間違わないように、迷わないように、困らないように厳しく生きることを良しとするアレクシ父

それぞれがそれぞれのままならない思いを抱えて生きているところに、"生"っぽさを感じる。

こう考えるとケイトやルフェーヴル先生、社会福祉士のような身内以外の人間がいてよかったね…としみじみ思う。
(ダヴィドてば先生にも言い寄ってたんかい、と思ったけどあれほど生徒に誠実で理解ある先生のことはそりゃ好きになるよ…社会福祉士への対応も素晴らしくて全員に良い形で真実を明らかにしたしさ…)

アレクシとダヴィドとケイト3人の関係って薄っぺらな言葉で言うと人生そのものだなぁと思った。

ダヴィドは言わない方がいいこと(君に飽きた) を言って前に進めなかった。
アレクシはケイトが言わない方がいいこと(それは最高の友達の幻想) を言ってくれたことにより前に進むことが出来た。

どちらも経験があるし、その言葉が毒になるのか薬になるのかは言った方と言われた方の精神状況にも成熟度合いにも 何ならその時の気分にもよる。
何事も人とタイミングなのだなぁと思う。


しかし本当に墓の上で踊った時はなんだかめちゃくちゃスカッとしたな。
意味のない約束、いいな。

死の概念に興味があることをアレクシが話した時、あの意味のない約束をした時、ダヴィドはいつか風の向こう側に行くことを直接的な死だと捉えていたの?


ボートもバイクも部屋の姿も
表情と身体があまりにも美しくて瑞々しくて見惚れてしまった。

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(しかし小説で語るってなんてお洒落なんだ…どこをどう切り取っても設定がお洒落すぎて…1番最初にこいつ死ぬよって宣言されるのは笑ってしまったけれど。アレクシの陶器のように美しいお尻のことは暫く忘れられません。美しい夢のような情景とミステリ感が交互に現れるのめちゃ好みでした。)
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