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アナザーラウンドのAPlaceInTheSunのレビュー・感想・評価

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
4.0
【『ハングオーバー』と見せかけて『ハズバンズ』!!🍻】

昔からサッカーが大好きなので、ワールドカップやユーロはやはり注目している。
デンマークという国は世界トップクラスでもなく、かといって弱小国でもないヨーロッパのなかでも上の中くらいのランク。
そんなデンマークはデニッシュダイナマイトとか呼ぼれていて、突然のように爆発的に好成績を残す事がある。
ユーロ'92 の時なんかは試合前にチーム皆で酒飲んで血中濃度を計ってたのでは?なんて妄想してしまった(笑)。

ミドルエイジクライシスに直面する中年男性達。
彼らが酒をかっ喰らい、人生を振り返り、そしてという展開はジョン・カサヴェテス監督の「ハズバンズ」を想起させられる。幾つかのシーンは直接的に引用してるようにも見受けられた。

冒頭のシーン大酒飲んで暴れまわっててもどこか可愛くてイケてる高校達と、
中年教師4 人が酒を飲んだ時の悲哀が混じった痛々しくい様を対比させていて、見せ方が上手い。

自分の人生はこれで良かったのか。成りたかった自分に成れているか。周りはオレの事を見くびっているんじゃないか。愛する妻は…。

大まかなストーリーは、予告編や前情報として知られてる通りで、それ以上の大きな驚きがある訳ではない。
「ウェルメイドな良くまとまった映画」で終わってたかもしれない本作が、予定調和から飛躍する終盤以降の展開は、監督の娘さんの事件があったからではないか。娘さんの死が、劇中のトミーの死に投影されている。
主人公と愛する妻は「トミーに応援され」再び一緒に歩き出す。
高校の卒業式の日の夕暮れ時、トミーが愛犬とボートで漕ぎ出した海から見る夕焼けが眩し過ぎる。あの美しい夕暮れで、監督はトミーと娘を送りだしたかったのだろう。
(あの夕焼けの不思議にピンクがかった色が印象に残る。良く見かける紫っぽいマジックアワーの夕焼けとは違った、全てを淡く優しく染め上げる夕日。)


でもキルケゴールの言うとおり自分の不完全さを受け入れ、失敗を認める。他者と自分を愛する為に。そこからでしか出発できない。

でも人間なんて何回も失敗する生き物。
また失敗したら、あの4人で集まって酒を飲んで、酔っぱらって、少し暴れて、
、、。また翌朝には二日酔いで重たい身体を起こして、眠たい目をこすって、一から始めたら良い。トミーも応援してくれている。きっと。
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