2022年35作品目。
デンマーク、40歳を迎えた教師仲間4人組。
現役世代でありながら、仕事、プライベートそれぞれ、これまでのような勢いやムードと違うものを感じている。
なんなら、自分の表現の仕方、コミュニケーションにぎこちなさも。
誕生日会で集まったある晩、浮かない友人マーティンをみて、こんな話を切り出す。
ノルウェーの哲学者フィン・スコルドゥールの理論によると、
"アルコール濃度0.05%かベスト。"
リラックスした気持ちで力と勇気が戻ってくる、という。
長年の友人だからこそ、"お前には自信と楽しむ気持ちが足りていない"、"お前昔はイカしてただろ、ジャズバレエなんか踊ったりしてさ"とけしかける。
その晩、透き通ったウォッカを乾杯した4人はアルコールで高揚していき、いっそ、この理論に乗っかってみて、生活がどう変わるか実験してみようと始める。
翌日から早速、鞄に酒を忍ばせ、校内のトイレや倉庫で、アルコールを嗜む4人。
成程確かに、リラックスし、浮き足立ちながら、コミュニケーションの壁は取り払われ、生徒との会話も弾む。
社会の教師マーティンも、とっつきにくかった授業から、偉人クイズを取り入れ、生徒の理解度にも着目した、総参加の生き生きとした授業に生まれ変わった。
家庭でも、コミュニケーションが増え、好転していく。
"ヘミングウェイも夜8時まで1日飲んだ後に執筆し、名作を生み出していた。
週末は飲まない。"
として、濃度5%と飲酒タイミングについてのルールを設けていたが、
調子が出てきた4人は、"濃度は5%である必要があるのか?"とルールを変えて、実験を続けていく。
勢いを取り戻していく4人。
仕事、プライベートでもパフォーマンスをあげていく。
そんな中、エスカレートした4人は、
スコルドゥールの"点火"
"もっと飲みたくなる状況"を味わおう、とアルコール濃度の制限を取り払ってしまう。
ついに壊れるように飲み明かし、
おねしょ、路上寝と失態を重ねていき、
周囲からの疑いの目もあてられるように。
家族、妻との関係修復に向かっていたマーティンも、酒の勢いから、修復どころか
家庭崩壊につながる大喧嘩に。
仕事、プライベートともに崩れ落ちるようにボロが出だした4人。
ついには、トミーが泥酔のまま船で海に出て、命を落としてしまう。
このままではと我に帰る3人。
しかし、トミーを偲びながら、トミーが居たらどうするかな、と結局はボトルの栓を開けることになる。
この映画は決して、アルコールが悪だとはうたっていない。
作品中でも、大酒飲みのヘミングウェイ、チャーチルと下戸のヒトラーを引き合いに出している。
ラストの学生たちの卒業祝いでも、酒はみんなで浴びながら飲んでいる。
国としても法律としては飲酒に年齢制限は置いていない。(度数によって、店舗での販売は制限があるよう)
基本的にはアルコールっていいよね、
ただ、程々にね。
というスタンス。
マーティンや、留年していた学生の描写、どことなく親近感は湧きますよね。
緊張や自信のなさ、不器用さから、表現・アウトプット・パフォーマンスをできない。
本当はうちに抱えているものがある、それをうまく出せない。
後押ししたくなる。
後押しするのがお酒でも、ある程度はいいのではないかなと思う。
かく言う私も、とある楽器の人前のパフォーマンスの時は、必ず白ワインをグラス半分飲んで挑むという"試合前ルーティン"をとっていた。
適量のお酒は人生を豊かにする。
ただ、思うのは、パフォーマンスする側のアルコール摂取だけでなく、対話、受け入れ側の姿勢でも変えていくことは出来るとも思っている。
問い掛けの仕方で、アウトプット、パフォーマンスが変わることもある。
アルコールは一つの手段だが、手段はまだまだある。
思いやりがあれば生み出せる。
"小さなことが大きな違いを生み出す"
程々にだけど、友人と酒を交わしたくなった。