ShuheiTakahashi

FLEE フリーのShuheiTakahashiのレビュー・感想・評価

FLEE フリー(2021年製作の映画)
3.7
アミンが自分に起こった事実を監督である友人に語る。
過去の回想をアニメーションにすることで、下手な実写よりも観やすくしている。
アニメーションという虚構なんだけれど、リアリティが増している気がした。

長い時間をかけてインタビューすることで、アミンの現在も変化していく。
アミンが向き合えなかった苦しい過去と向き合うことで、現在、未来と向き合っていく。

アフガニスタンからロシアへ逃げ、ロシアからデンマークへ逃げる。
しかしアミンはアミン達家族は精神的な意味では逃げていなかったと思う。
生きるために闘い続けている。
密入国に失敗しても、再び諦めずに挑戦する彼らは決して逃げていなかった。
生きる手段を探し続ける。

ロシアのクソ警察に暴力を振るわれ、金を盗られ続けても、魂までは奪わせない。
不法入国者、不法…。
法律なんてくそくらえ。
国境をなくせなんて言わない。
ビザをなくしてくれ。
入出国は自由にしてくれ

アフガニスタン難民でもあり、アフガニスタンでは許されない同性愛者でもあるアミン。
人に言えない苦しみを何年も抱え続ける苦しみは計り知れない。

救いは良き家族や友人、パートナーがいたこと。
アミンの苦しみを受け入れ、支え合える人がいたこと。
長兄は凄すぎ。
アミンがゲイだと打ち明けたとき、知っていたよとゲイバーに連れて行ったのは凄く良いけれど、知っていたなら何故執拗に彼女はいないのかとかこっちは美女ばかりだぞと言ったのかとか思ったけど。
本当は知らなくて、知らなかったけど、兄なりに受け入れた言葉だったのかなと思った。

家族がいるのに、家族のおかげで今が在るのに、家族は全て死んだことにする苦しみ。


アミンが過去の話をすることで、今まで誰にも話せなかった苦しみと逃げずに向き合い、今の幸せとも向き合っていく心情の変化にグッとくる。
ShuheiTakahashi

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