ニシカ

スパイの妻のニシカのレビュー・感想・評価

スパイの妻(2020年製作の映画)
3.7

「私は一切狂ってはいないのです しかし、それこそが狂っていると言う事なのです この国では」


太平洋戦争前夜の満州から帰国した夫は国家機密を持ち込み、死体として浮かんだ女を連れ帰っていたのか⁉︎昭和奇譚とも言うべき終始あやかしの雰囲気を纏わせたミステリーはそれぞれ己の正義を貫くが故に憲兵をも欺き、夫婦が仕掛け合う感情の接触がラブストーリーとしても透けさせる。ややメロドラマ的な芳しさと秘密を共有し高揚の突き上げが止まない妻の姿が、怪奇な物語をより一層不穏に魅せ、予想する結末を見事に欺いてくる。

蒼井優の巧みさ、高橋一生の安定感も然る事ながら黒沢清監督は東出昌大の振り幅少ない表現力を逆手に取って上手く光らせますね

そして音楽が長岡亮介という周到さにお見事です
ニシカ

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