Yuri

スパイの妻のYuriのネタバレレビュー・内容・結末

スパイの妻(2020年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

黒沢清×731部隊の話だなんて絶対超怖い、観れないと思いましたが、銀獅子賞獲っちゃったし、うなされるだろうけど行くしかないと腹をくくり、観てきました。ドラマ版を再編集したものなので、夫婦に深く関係しているだろうキャラクターの描き方が一瞬だったり、シーンの切り替わりに不自然さを感じたり、夫婦のエピソードも足りないと感じました。なので、映画というよりは舞台の構成に近いです。蒼井優の演技もメロドラマチックで、高笑いして気絶するとか舞台めいていました。731部隊に関しては、存在そのものがホラーだし、当時の隊員の証言も人間の所業とは思えないものが多いですが、本作では黒沢監督の見せずに感じさせるホラーな描き方が、だいぶ怖さを半減してくれていました。優作が聡子にやり返したのは、愛だけでなく、少なからず文雄を犠牲にした怒りもあったのかな?と感じました。優作の会社の字体が現代の左書きだったり、J.F.ドラモンドなど実在の人物、実際の戦況と絡めたリアリティーと緊迫感のある作りが見事で引き込まれました。言論の自由って改めて不可欠だなぁと。誰かの犠牲の上にしか存在得なかったり、「正義よりも幸せをとりたい」と言った平穏主義の聡子を駆り立てるほどの人災を、決して繰り返してはならないと思いました。そんな過去の歴史が対岸の火事じゃなくなっている今が怖いです(((;゜Д゜)) 普通の幸せを望み暮らしていたのに、ある日突然、薄氷の上を歩くしかなくなってしまったり、聡子の「狂っていないことが狂っている、この国では」という台詞が、現代でも地続きで続いていることに気付かされる、今の時代に響く作品です。
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