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スパイの妻のすのネタバレレビュー・内容・結末

スパイの妻(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

観てつらくなったけど観て良かった。

つらみ①
優作たちが知ってしまった、関東軍による満州での細菌兵器の開発と使用。
記録フィルムは実際のもの?っていうリアルさで歴史の授業を思い出した。
今は仕事、勉強で中国の方との関わりが多いのもあり、気持ちがずん…となった。

つらみ②
憲兵による拷問のシーン。歯を抜いたり爪をはいだり…叫び声が痛々しくて見てられなかった。

つらみ③
誰々の妻、ということが1番のアイデンティティな女性の生き様。
優作の企みを初めて知ったときに聡子が言った「私は正義より幸福をとります」の言葉が聡子の本音だったはず。「日本の同胞がたくさん死んでも正義といえるのですか」もまともな意見だと思える。
でも夫が自分の正義をとろうとしている以上、その幸福は叶わない。
だから夫と一緒にいるために、他人を犠牲にしてでも「あなたには私しかいない」状況を作る。
それでも報われない…つらい。でも聡子はどこか気丈に見える。
自分以外の人やものに自分の存在価値を託すのは強い意思と忍耐力が必要。

つらみ④
聡子は優作にどこか見下されていて、同志としては見てもらえない。
冒頭のシーンから金庫の鍵の番号は覚えていないと思われているし、まさか重要文書を盗むとは思われていない。
アメリカに渡るとき、二手に分かれようと提案したのは、聡子を危険に巻き込まないためというより、憲兵の警戒を聡子の船のほうに向けさせて、自分がより確実に渡航するためだったのだと思う。
というか、優作が聡子と話してる内容では優作は駅に向かうと言っていたが、ボートで海に出ていた…
聡子が憲兵に自分の同志を売った時点で、妻ではなく自分の目的を達成するための駒のように見えてしまったのかも。

つらみはありすぎたけど、もう別れを決意していたであろう優作が聡子に「胸を張って生きろ」と言った言葉が救いといえば救いかな。いや、あんな風に取り残されたら無理でしょ…とは思うけど。
す