棒読みの美しさってあるよね、日記の文章とか今の生活とか全部が理想的すぎて、、

ゼーバルトをちょうど読んでいてクロスする部分もある。素晴らしいショットも多く、もっとこの監督の作品を観たい。
もうちょいまとめて欲しいなと思いつつ、何故日本でやらないのか謎。
時間と自分の年齢との同時性

IFF2019上映時邦題『30歳のとき、世界を廻った』。日本を飛び出して世界を廻り、いまはポルトガルに住む男=父について、監督＝娘が撮る。父の過去の旅写真、父の過去の日記、父の朗読、娘の撮影による現在の父…で構成された"日記映画"。
…と思って見ていると、わりと序盤に父の目が悪くなったことが知らされ、過去の日記を朗読することが不可能になり、「日本語を読むことができない」という監督=娘は朗読の"外注"を余儀なくされる…その途端に緊張感が緩み、急激に失速する感は否めない。朗読者の変更による失速は、別に特段"朗読者"として巧みというわけではなかった本人=父の朗読が、代替不可能なものであったという事実の証明であり、それ自体は感動的…なのだけれど。失速は失速…。

安易にジョナス・メカスや佐藤真を想起したりもするが、メカスの叙情も佐藤の得体の知れなさもない。しかしある意味では、とことんまでに名もなき個人に収束するという"変哲のなさ"が本作の美徳でもあるともいえる…かもしれない。淡々とだらだらしているが、それを求めているならば普通に楽しめる。

2020/08/08