はるな

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースのはるなのレビュー・感想・評価

5.0
1作目の時点で半端無かった当時の最新アニメーション技術を、濃度、情報量、色彩、画のタッチの多彩さなどなど更に数段回レベルアップさせ、2023年現在で出来得るありとあらゆる映像表現の可能性を拡充させまくった超絶豪華な正統続編。現時点での表現技術の到達点を目の当たりにするためにも劇場鑑賞はマスト、2000円ちょいの高い追加料金を払ってでもIMAX以上の上映形式の鑑賞でハズレなし。
脳がパンクしそうになるほど詰め込まれた映像の密度は、時々字幕を追うことを放棄して陶然とただスクリーンを眺めるだけになってしまうほど。これほどまでの情報量の作品であれば当然起こってしまいがちなストーリー・キャラクターのどうでも良い化、アクション表現のインフレによるどうでも良い化、が起こらない構成力は流石のクリストファー・ミラー&フィル・ロードコンビ『LEGO®️ムービー』を撮った監督、キャラクターを作り上げ、マイルスやグウェン個人にしっかりと感情レベルで焦点を当てた上でより高次の“スパイダーマンに背負わされた哀しき運命とその因果”というテーマに結実させていく。しっかりと足元から組み上げていったおかげでヒーローは応援したくなるし、観客もバンドの一員になりたいというところに説得力が増す。
ヴィランの設定も面白い。ヒーローがヒーロー的活躍をしたが為にその裏で、まさにその活躍と表裏一体の形で誕生してしまったヴィランとしては、同じスパイダーマン主役シリーズ『アメイジング・スパイダーマン2』のエレクトロを想起させる。『アメイジング~』ではやや性急な感じのあったエレクトロとの決着に、改めてスパイダーマンシリーズだからこそ出来る回答、決着は続編以降期待するところではある。
ともかく、スパイダーマンシリーズが結局は陥っていたスパイダーマンの運命、誰からも存在を忘れ去られ、それでも親愛なる隣人として一人究極的な孤独に陥っても戦い続けるというこれまでのシリーズの顛末、しかも観客もそこをこそ求めて喝采を送るという、実は歪に終わっていたこれまでのシリーズに対し、しっかりとスパイダーマンだからこそ出来る回答を見せるためには前後編長すぎる尺を使わざるを得ない訳で、ますます1年後が楽しみで楽しみで。
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