Flunkout

はりぼてのFlunkoutのレビュー・感想・評価

はりぼて(2020年製作の映画)
4.7
『失敗の本質』ならぬ『停滞の本質』

笑えないけど笑うしかない浅ましい人間模様がこれでもかと展開される。

地方の話、腐った自治体の話と切り捨てられない日本型組織の浅ましい現実が垣間見れる。

詳細は是非本作を見てもらいたいが、ここに出てくる腐りきったオヤジたちの醜態は、働いた事がある人間ならどこかで見たような気がきっとするだろう笑

さて、本作を見ていると「何故日本が戦争に負けたのか」「なぜ経済が停滞し続けているのか」がなんとなく分かる。

この映画が映し出す、同調圧力による腐敗と無責任体質、縁故主義による弊害は、太平洋戦争の総括として戦後に出版された『失敗の本質』が指摘する旧日本軍の組織的欠陥と恐ろしく符号する。

同書には、軍部では指揮をとった人間に作戦失敗の責任を取らせず、万単位の部下を失うような結果でも降格されないよう軍上層部は互いに庇い合い、失敗を有耶無耶にし、出世においては能力ではなく縁故が優先されるような組織腐敗があったと看破している。

また、終戦後に連合国軍からの取り調べに対して多くの軍上層部が「自分は内心では開戦に反対だった」と述べたという。それに対して「何故そう言わなかったのか」と問われると「今更やめるとは言えなかった」と答えたという。

敗戦から80年が経とうとする今、やはり我々の本質的な部分は変わっていなかったのだなと改めて認識させられる。

奇しくもというか、案の定というか、裏金作りの問題は、国政における自民党でもホットな話題となり、絶賛大炎上中である。

しかし、自浄作用を望めるような真摯な対応は一向に見られず、記憶を無くした議員たちが、下が勝手にやりましたの大合唱で責任逃れに勤しんでいる。

軍部の無責任が「失敗の本質」なら、政治家の無責任は「停滞の本質」なのだろう。

一地方自治体の腐敗から、日本全土に蔓延った閉塞感の原因を思い知らされる一作だった。

唯一の希望は、税金を食い物にする腐った政治家を叩き落とせる一人一票が憲法で保証されている事である。
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