磯野マグロ

二人ノ世界の磯野マグロのレビュー・感想・評価

二人ノ世界(2017年製作の映画)
4.2
【逆オアシス】136

明確に「いやーすごいもの見た」という感覚がある。何年か前の撮影でお蔵入りしそうになっていた作品で、当時これを作ったのが京都造形大の若いスタッフだった、なんてことでひいき目にみたりする必要もなく、テーマも撮影も演出も渾身の一作。
バイク事故で寝たきりの主人公、俊作役の永瀬正敏がいいのは当たり前として、その介護にやってきた全盲のヘルパー華恵を演じる土居志央梨がものすごかった。
肝が座ってる。そこに立ってなにもしていなくても華があるし、ストーリーを感じさせる。いい顔してるのよ、これがまた。このときまだ学生だったというからすごいんだけど、すでに林海象や高橋伴明の映画にも出ていたらしいのであきらかな逸材だったのか。知らなかった。
ふたり以外のキャストは演技的にはちょっと不安定なんだけど、財産を狙って華恵を追い出そうとする、いとこのババアが放つ「どこか行きよし」は京言葉の破壊力を改めて思い知りました。おー怖。笑
俊作のおとっつぁんは、こうなるのはわかってるんだからお金のことは華恵に丸投げじゃなくてもうちょっとなんとかしとくべきやろ。あと演出としてもうちょい、介護のきっついところも見せたほうがふたりの結び付きが感じられると思う。
見てて思い出したのが「オアシス」。障害の程度が男女で逆なんだけど、同じようにわかりあい求め合うことへの切実な祈りと諦念を感じました。
磯野マグロ

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