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もう終わりにしよう。のnaoのネタバレレビュー・内容・結末

もう終わりにしよう。(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます


冒頭から女性の心の声が聞こえたり、不自然なブランコが置いてあったりと微かな違和感が創り出す特異な世界観
そして、催眠術にかかりながら様々なジャンルを自由自在に行き来するような、独特な空気感が観る側を混乱させてくる

あらゆる場面が唐突であり、均一化もされていない。観る側を置き去りにするようなシーンの数々
その中で、断片的に描かれる情報から徐々に物語が分かっていく
ただ、最終的に答えを出すことは難しく、様々な意見を見た後で、"一人の老人の妄想"という考えに辿り着くことが出来ました

ほぼノンバーバルで展開されていた映像は、一見唐突な描写に感じましたが主人公が本当はしたかったこと、やり遂げたかったこと、という見方をすると一気に意味が変わってくる

自分が自分の人生の主役であるように、劇中の彼も彼の人生の主役である

「こうだったらいいのに」「こういうことしたかったな」と考え、妄想の中では理想通りの自分が存在する。それがモチベーションになることもあるし、現実に戻った時に打ちのめされる場合もある。
楽しかった頃は、ずっと終わらない物語だと思っていたかもしれない。だが、それはどこまで行っても「妄想」でしかない

そのように相対的に理解できている事柄をこの1人の老人の物語を通して、チャーリー・カウフマンは人間の内面とともに描き出す

現実と妄想が錯綜し、たどりついた結論は妄想の終わりなのか、人生の終わりなのか明確に描写はされない
ただ、ラストの雪に埋もれた一台の車からは、絶対的な何かの「終わり」を感じさせる

チャーリー・カウフマンの手のひらで踊らされる久々に頭をフル回転させられた作品でした😀
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