「荒野にて」の演技が良くて気になっていたチャーリー・プラマー主演作。音楽は「ザ・チェインスモーカーズ」。
高校生のアダム(チャーリー・プラマー)は実験の授業の最中に突然暴れ出し、転校を余儀なくされる。検査の結果、彼に下された診断は統合失調症。料理人になる夢を諦められず、治療に励むアダム。同じ学校に通うマヤと親しくなる中で、アダムは幻覚と戦いつつ、自分なりの生き方を模索し始める—— 。
マヤ役は「ボーンズ・アンド・オール」のテイラー・ラッセル。神父役でアンディ・ガルシアも出ているゾ。
アダムが見る幻覚をVFXで視覚化し、観ている者も総合失調症の追体験が出来るというのが本作の特徴。燃え広がる炎も、その身を覆い尽くされそうな漆黒の闇も。全て視覚で訴えてくる。
そして、毎朝彼におはようと告げてくるのは、頭の中の3人の住人達。
スピリチュアル系女子、癒しの存在であるレベッカ。
全身ジャージ姿でバットを手放さない、好戦的でキレやすいおっさん、"用心棒"。
青春映画に出てくる、エロい親友。パンツ一丁にガウンを羽織ったホアキン。
個性豊かな住人達が面白い。
いやいや。
総合失調症を少々ポップに描き過ぎてはいないかと、冒頭は心配した。少しエンタメに寄せ過ぎて、不謹慎な気がして。しかし、中盤以降はそんな気持ちも薄れてくる。
薬を飲めば、頭の中の住人や様々な幻覚は消えてくれる。しかし、その反動ともいえる副作用で手が震え、料理が作れなくなる。
アダムの辛さが痛い程に伝わってくるし、そう感じさせてくれるのは、紛れもなく我々が彼と同じ幻覚と幻聴を共有しているからに他ならない。常に頭の中で誰かが話しているなんて、確かに気がくるいそうにもなる。黙れと叫びたくなるのも当然だ。
"愛で病気は治らないけど、助けにはなる"
マヤとの出会い。
献身的な母のケア。
誤解していた義父の本心。
さり気ない役だったけど、アンディ・ガルシアの醸し出す安心感も堪らない。
劇中、ベタ褒めされていた「25年目のキス」を観たくなる。
これはなかなかの良作。
満足度高め。