QM

海辺の彼女たちのQMのレビュー・感想・評価

海辺の彼女たち(2020年製作の映画)
3.8
平日昼間の映画館で古い映画でも見ようと上映作品を調べはじめてすぐこの作品が目についた。普段から"外国人技能実習""研修生事業"の文字を見るとゾッとする私は「わざわざ暗い気持ちになりにいくのか」「観なくてもわかってる」と多少の葛藤がありつつも、"お金を払うことは投票すること"とのマインドで結局観てきた。もやっとするけど見たことを後悔するような足取り重い帰路にはならなかったので同じように苦手意識のある人にも見てほしい。あまり説明的なものはなく感情描写の部分が多いので状況理解に多少事前知識が必要とされる気も。とにかく救いのない話なのだが、"人間の尊厳"が普遍的な形で落とし込まれつつもフィクションであることには救われる結末。

以下半分日記的メモ。
今回やだなーと思いつつも後押されたのは昨日見たニュース。昔、大学最終年というのにフラフラしていた私を見かねた先生が「公的な団体だから」と紹介してくれて採用試験に参加した団体がなにやら不穏な形で報道されていて懐かしく思っていたところだった。自分のまわりには大学卒業後、日本でベトナム関係の仕事につく人もいた。その中の定番のひとつが技能実習関連企業。管理する企業側の先輩や友人達は24時間つながるピッチを持たされ受け入れ先企業 (といってもほぼ工場とか農家) から何かあればすぐ電話がかかってくる。色んな話を聞いていたが、中でも驚いたのはトイレの小さな窓から(研修生が) 逃げた話や、農家の庭に設置したプレハブ小屋に何人も詰め込んで住まわされているという話。研修生達はデポジットとして100万円位 (当時) 積んで家族親戚の期待を背負って来ており逃げたりしたらそれが没収される。それでも逃げるってどんだけ酷い環境なんだよと。学生時代、留学先の国で会った社会人の友人達は日本で100万前後の予算を貯めてワーホリで来てるという人が多かった。どんな環境だったのかよく知らないけど農場で季節労働しながらあちこち旅して、みんな人生楽しんでる感じがした。一方ベトナム人研修生は100万 (めちゃ大金) 貯めるが日本での生活を楽しむための予算ではなく、安い給料の中から毎月家族に送金。むやみに国にも帰れない。この違いってなんなんだ?!って思っていた若い頃。

私もそんな研修生事業に足を突っ込みそうになりつつも、その業界とは今に至るまで縁はない。二次のグループ面接で事業の問題点について質問し、どんな回答をもらったかはもう記憶にないが「あれで落ちたんだな」と思った記憶だけはあるので恐らく当たり障りない回答をもらったのち最終選考には進めなかった。私は日本で働くことに魅力を感じず外に働きに行った。新卒で現地人の中に混じって働いてたのでいじめ的なのも受けたし、あれから色々と踏み台にして日本の大手企業にいる今、この作品をみてベトナム・ベトナム人にシンパシーを感じるかといえば無いのだが、"実習生""研修生"と名のついたあのシステムは否定されるべきものと思う。日本のビジネス環境はここ5年あまりで変わりコンプライアンスも厳しくなったわけだが、"研修生"周りも無法地帯からは脱するための動きがあることを願う。最近ニュースで聞くようにはなったけど、少なくとも私が学生時代からずっと酷いままなんだなって。先日も悪名高き入管でスリランカの方が亡くなられた。衰退の未来しかない国に住む我々は、はるばる外国から日本を選んで来てくれて、日本人の若者の多くが仕事がない金がないと言いつつも絶対働きには行かない宛に働きに来てくれてる他国の若者の状況を知らなければならないし、 (人権擁護の話はいうまでもないこととして) 労働者としてちゃんと守られなければいけないのでは。もう日本は外国人の働き手なしには回らない場所なんだから。

久々に聞くベトナム語の会話、冗談みたいに子どもっぽく雪で遊ぶ女の子達は現地人を思い出させ、コロナ終息後また行きたいな…と色々なつかしくなった。
QM

QM