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ノマドランドのpopcornのネタバレレビュー・内容・結末

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

圧倒的な映像美と静謐な語り口で、円環(※作品自体も円環構造になっている)の中に生きる人々を描く。

冒頭のAmazonの倉庫のシーンでは、Fernは、同僚の腕に刻まれたタトゥー(Morrisseyのソロ曲"Home Is A Question Mark"の歌詞である"Home, is it just a word? Or is it something that you carry within you?" )を見てもあまりピンと来ていない(というより聞き流している)ように見えたが、この歌詞が本作の主題を示唆している。

原作がどの様なスタンスなのか分からない(本作のように特定の主人公を置いているのかも知らない)けれど、少なくとも本作は、背景としてリーマンショック等に触れながらも、資本主義批判を展開することを主たる目的としてはいないし、カウンターとしてのノマドを(ある種の憧憬を抱かせるものではあることは間違いないが)単純に"善き/良きモノ"として称揚することもしていない。ドキュメンタリータッチであることに加えて、監督の出自も影響しているのか、外部的な視線というか、当事者から一定の距離が保たれているように感じられた。

本作は、Fernがノマド生活や仲間との交流を通じて、"Home"を自らの内に見い出し、物質(House及びこれに附帯する物)への固執を捨て、新たに人生という円環の中へ戻っていくまでの過程を描いてみせることで、観客に対して"どう生きるか"を問い直す契機を与えてくれる。

ストーリーに大きな起伏がなく、画的な動きも少ないので退屈だと感じる人がいるのも理解出来るけど、個人的には、オスカーで主要各部門を獲得しても何の文句もない傑作だと思う。
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