ニシカ

ノマドランドのニシカのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.7

「家は心の中にあるものよ」



経済的破綻や今生の別れを引き金に路上で暮らす高齢車上生活者たちの生き様を雄大な大自然を背景に描き出す。人生の終盤を時に日銭に苦しみながらも自由と孤独を往来しながら当て無き終わり無き旅路を進む。気持ちの有り様で見える景色も変わるというが、暗闇前のトワイライトが象徴的に映し出されたように、その先に待つであろう寂しさに憂う



思想・信念は尊重を大前提として、どのような生き方を選び、また選ばざるを得ないにせよ、お金は多少なりとも無いと人生の終盤は特に無理ゲーだよなぁとトボトボと映画館を後に帰路に着く。そして、この映画を観て、こんな生き方もあるんだと気持ちが軽くなった系のレビューをいくつか見て、自分もそんなタフなメンタルが欲しいなと強く思う。



古びたヴァンを駆りながら季節労働をし、大自然の中に身を溶かしながら生きるノマドのファーン演じるマクドーマンドは流石のアカデミー女優の繊細且つ言葉には現れない心情を表情と佇まいで表現して観る者をスクリーンへ惹きつける。


監督クロエ・ジャオは雄大で美しいアメリカを背景に生きづらさを持ちながらも立ち上がり人生を挑もうとする者の作品を描くのが巧い。マーベルは監督の前作『ザ・ライダー』の時点で『エターナルズ』の監督オファーを出している。マーベル最新作『ファルコン&ウィンターソルジャー』を見てもわかりますが、最近のマーベルは最先端のヒーローアクションを魅せながら、誰しもが抱える1人の人間として持つ弱さや悩み、生まれ持った属性による差別などによって心に隠し持つ機微を物語に表現していこうとしています。クロエ・ジャオが持つ広大な世界にいる1人の人間の家族と私の気持ち、そしてあなたはひとりじゃないという表現とあらゆる世代へ訴える力をマーベルの世界観でどう魅せてくれるか非常に楽しみです。

マーベルチームの次代のクリエイターをいち早く見抜く力は異様のすごさだわ、。
ニシカ

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