シミステツ

ノマドランドのシミステツのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.0
成長だけを考えた経済へのアンチテーゼ。
自ら、また周囲の病気をきっかけにキャンピングカー暮らしを決意した人々の声。心と経済的豊かさのバランス、ウェルネス。作品主題的にアカデミー賞が好きそうというか、つまりはきちんと時代・社会の潮流を掴んでいる印象。とはいえ原作は2017年だし少し「遅い」感も否めない。

「ノマド」と聞くと近年で云う「ノマドワーカー」のようなファッションうわべおしゃれ働き族をイメージしてしまうけど、こちらは真っ当な覚悟や信念を感じる。もちろんそうせざるを得ない人たちもいるのだろうけど。

仕事はしたいけど縛られたくない。何ものかの言いなりになりたくない。時間や場所に縛られずに生きたい。心が荒むほど働きたくない。社会のシステムに抗うこと、そうして犠牲にした過酷さもある。高齢になったとき、我々は果たしてどう生きて、働いていたいか。幸せを感じていたいか。考えさせられる作品。

映像が、景色が美しいです。ピアノの旋律と相まって。あるがままの自然をあるがままに映し出したような景色。それだけでも充分にメッセージとして伝わってくる。

「この生き方が好きなのは、最後の”さよなら”がないんだ」

ノマドであるということは、そこに”あり続けること”でもあるのかもしれない。悲しみや孤独も内包しながら、絶えず蠢き続けること。