ShinMakita

アイダよ、何処へ?のShinMakitaのレビュー・感想・評価

アイダよ、何処へ?(2020年製作の映画)
3.0
1995年7月。ボスニア、スレブレニツァ。かつてムスリム人(ボシュニャク人)が大勢を占めていたこの町は、セルビア人勢力(スルプスカ共和国)に包囲され、絶体絶命の状態にあった。国連はスレブレニツァを安全地帯と定め、スルプスカ共和国が侵攻するなら空爆すると脅しをかけたが、指揮官ムラディッチ将軍はこれを無視、ついに7月11日、セルビア人勢力はスレブレニツァ攻撃を開始する。ムスリム人たちは大挙して国連基地へ逃げ込もうと殺到する…

その国連基地、オランダ軍が運営していたが非常に貧弱で兵員はわずか数百。しかも物資調達が春から滞っており、難民を受け入れられる充分なキャパもない。空爆を確約した司令官も、いきなりのセルビア人侵攻に驚きオロオロするばかりで、国連本部に救援と空爆を要請するも聞き入れられることはなかった。そんな場所で国連通訳として働いていた現地女性アイダは、夫と子供たちを基地内に匿うことにとりあえず成功。しかしその直後、ムラディッチがオランダ軍にプレッシャーをかけ、国連基地は事実上セルビア人勢力に開城することになってしまう。セルビア人たちはムスリム避難民たちを男女に分け、男たちは次々にトラックの荷台に放り込まれていく。オランダ軍が撤退準備を行うなか、アイダはなんとか家族をオランダ軍と一緒に脱出させようとするが…


「アイダよ、何処へ?」



以下、ネタバレよ、何処へ?

➖➖➖➖

1992年から始まるボスニア紛争。ボスニア独立を機に、ムスリム人とセルビア人の民族対立が激化して戦争になったわけだけど、まぁセルビア人のやることがえげつない。スレブレニツァのムスリムを完全抹殺・民族浄化するのが目的としか思えない8000人の大虐殺をやらかすのです。それも国連軍の目の前で。国連軍が一切止めなかったというのもかなりショッキングで、スクリーンを通してアイダの絶望を体感すると、声が出ないというか…言葉も出ません。なりふり構わず家族を救おうと奔走するアイダの姿に、強烈な母性を感じたな。同じ仲間たちの白い目もオランダ人の他人事感も気にせず、がむしゃらに突っ走るアイダの顔に、涙。終戦後のスレブレニツァは、彼女の目にはどう映るんだろう?

観る価値がどうこうじゃなく、観るべき作品。俺が二十歳過ぎてから起きた大量虐殺の現実。知っておかなくてはならない事実です。
ShinMakita

ShinMakita