なにが被害をそこまで大きくさせたのか？重苦しく力強く目が離せないで、ただただ参ってしまう100分
20世紀末1995年、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争下の国連施設を舞台に、家族("だけでも")を守ろうとする通訳女性の悲痛な叫びが彼女の走り回る施設内外で飛び交う、必見の力作。重大な人権侵害によって凄惨な戦争犯罪が行われていくさまを燃えるような圧倒的熱量と目を背けがたいリアリティで克明に描き出し、ホロコーストのような様相を呈していく。
常軌を逸する狂気と混沌の真っ只中、そして最前線へあなたは突然家族あるいは最愛の人と放り込まれるだろう。国連の無力さに歯痒い思いを感じずにはいられない。"たられば"ともしもを考えても仕方ない話なのだけど、"もっとあのときこうしていれば〜"とか本気で考えてしまう。
手に汗握るような緊張がすごいし、否定し難いほどバワフルで衝撃的。もちろん言葉なんて分からないけど、それでも主演のヤスナ・ジュリチッチの鬼気迫る迫真の熱演、そのすごさは何となくでも確かに伝わってきた。
もちろん主人公はその他大勢の人たちよりも恵まれた立場(特権階級とも言い換えられるかもしれない)にあって、見方を変えれば「主人公だけ」とも取れなくないのだけど、むしろ自分がその立場になったらそうしようとしない人いますか？なんて苦しい作品だ。
We're on the list! せめて一人だけでも
勝手に関連作品『サウルの息子』
