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国境の夜想曲のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

国境の夜想曲(2020年製作の映画)
3.8
ジャンフランコ・ロージ監督が、3年以上の歳月をかけ、イラク、クルディスタン、シリア、レバノンの国境地帯を撮影したドキュメンタリー。
紛争が絶えない国境地帯で生きていく人々の生活を静かに写し出している。
ヴェネチア国際映画祭でユニセフ賞受賞。
原題/Notturno (2020)

・かつて牢獄として使われた建物の中で、亡くなった息子たちの痕跡に嘆き悲しみ、哀悼歌を歌い上げる母親たち。
ある母親は拷問された息子の惨殺死体が写った写真を見つめ、壁に触りながら語る。

・バイクで川辺にやってきて、水上の鳥を銃で狙い、釣りの仕掛けを投げ入れる若者。美しい風景の彼方には戦火があり、銃声が響いている。

・街の夜景を見下ろす店にいるカップル。女性はシーシャ(水たばこ)を嗜む。男はその後、部屋で正装し、太鼓を叩き、詠いながら夜の街を歩く。

・イラク北部クルド人自治区の治安部隊"ペシュメルガの"女性兵士たち。軍人としての日々。

・祖国を描いた芝居の練習をしている精神科病楝の患者たち。

・母親や幼い兄弟姉妹(7~8人)のために、海で魚を捕らえ、草原で猟をする年長の少年。夜も明けぬうちから猟師のガイド(日銭稼ぎ)のため草原に向かう。

・アメリカ国旗がたなびく難民キャンプ。今日もまた新たな家族がやってくる。

・ISIS(イスラム国)に襲われ、殺戮を目の当たりにしたヤジディ教の子どもたち。その様子を描いた絵を説明する少年、少女たちとカウンセラーのやり取り。

・オレンジ色の囚人服を着た大勢の男たち。高い壁に囲まれた刑務所の建物から広場に出て歩き、また戻っていく。

・廃墟の町並みを銃を持って通る二人の男

・スマートフォンを手に、ISISに連れ去られた娘から送られてきた今までのヴォイスメッセージを涙をぬぐいながら、順番にひとつひとつ聞いていく母親。

~芝居場面より~
「祖国よ、お前も神を手にするだろう。
一体何が起きたのか。
これは変革なのか
進攻なのか。
解放なのか。
国の問題は災難と終わりのない苦痛。
未来はどうなるのか。
ISISや侵入者、腐敗政府のせいだ。
国民より外国人の利益を優先した。
祖国よ お前も神を手にするだろう」

~テーマ曲「MAWTINI」("モディニ"と聞こえる。"私の祖国"という意味?)が心に響く~
「ああ  私の祖国よ
華々しい美しさ 
堂々たる荘厳さは
あなたの丘に抱かれている
命と解放 喜びと希望は 
その風の中に漂っている
この先私は見るかしら
安全で勝利の名誉を得たあなたを
安全で勝利の名誉を得たその姿を
高みにいる姿を 
私は見るかしら
星々に届きそうな姿を
ああ  私の祖国よ

ああ  私の祖国よ
若者は疲れを知らず 
ただ独立をめざす
さもなくば  命の花を散らす。
死の泉から飲んでも 
敵側には落ちまい
それでは奴隷も同然だから
私たちは  決して望んではいない
永遠に続く屈辱も 
みすぼらしい人生も
望まないから 
必ず取り戻す
語り継がれた  私たちの繁栄を
ああ  私の祖国よ
ああ  私の祖国よ」
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