伝統的なインド音楽の歌い手として身を立てようとする青年。だが、その道を極めるのは、音楽だけでなく人生をかけた修行が必要な困難なもので、たとえ極めたとしても、それで経済的に豊かになれる保証もないのだった・・。
インドの古典音楽と日常生活の音をバッグミュージック的にちりばめられてる音表現とか、乗り物に乗って進む人生の道行の表現とか、孤独な彼の胸の内を分かりやすく描いているように思えた。彼が追い求めるものが、資本主義やポピュリズムの進んだ現代の世界の中ではそのまま受け入れられにくいもので、それ故に余計に彼の進む道が困難なこともよく伝わってきた。
ただ、特別な大きな変化もない彼の人生の、その孤独な心の軌跡を追うのはあまりに映画が淡々としてたせいで私は途中脱落してしまいそうになり、そしてそのこと自体を忘れてしまいそうになった。確かに大好きなROMA風味はあるんだけど、正直ROMAのように心掴まれるような細かな仕掛けがあるわけでもなく、淡々系映画への耐性がかなりある人向けの作品かと思う。