Kaoric747

親愛なる同志たちへのKaoric747のネタバレレビュー・内容・結末

親愛なる同志たちへ(2020年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

最近のロシアのウクライナ侵攻の話題で「ロシアの一般の国民が悪いわけではない、政府やプーチンが悪いんだ」という人が多くいるが、結局それは1960年代ソ連も2020年代ロシアも変わってないということだと感じる映画。まじめに共産主義を信じ、国を信じるリューダは強い共産主義国であるソ連の国民が飢えるなんてそんなことあるわけないと信じているし、軍が国民に向けて発砲するなんてそんなことあるわけないと信じている。共産党市政委員のリューダは国民の賃金が下がり塩もマッチも店頭から消え物価も上がる中、店員に便宜を図ってもらうが、代わりにパンストをあげるなんて話もして、決して高圧的で一般の国民を蔑ろにしているわけではない。KGBのヴィクトルも自分の地位を顧みずリューダが娘を探す手助けをしたり、決して血も涙もない人でなしではない。皆誰を信じていいのか確信が持てずでも助け合っている。結局みんな普通の人たちだ。ただそうは言ってもリューダはことあるごとに「スターリンの時代はよかった」と言い娘に非難される。少しずつ何かがおかしい感じなのだ。アスファルトに血がしみ込んで取れないと苦情を言う作業員に「じゃあ上から新しく塗ればいい」という上層部。軍は空に向けて威嚇射撃をしただけなのに、何処からか飛んでくる銃弾で何人も人が怪我をして、死んだ人間はろくな墓も立ててもらえないまま存在しなかったことにされる。「何かあったら助ける」と言ったヴィクトルは本当に信頼できる人物なのか。実は生きていた娘(自分)に「きっとよくなる」と言うが、現在のこの現実を見ると暗澹たる思いである。色々言ったが、映画としては残酷なシーンも少なく淡々としている印象だった。今観るべき映画だと思う(2022/4/28 KBCシネマ)
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