みゅうちょび

ケミカル・ハーツのみゅうちょびのレビュー・感想・評価

ケミカル・ハーツ(2020年製作の映画)
3.6
すっごく良かった!!

ティーンの恋愛ものはそんなに見ないんだけど、Disco Pigsでちょっと火がついた。けど、全てにおいて真逆な作品なので中和するにはちょうどいいかな。

こちらも凄く繊細に主人公たちの心を描いてるなーって思った。

高校で校内新聞の念願の編集長に任命された主人公ヘンリー。しかし、任命されたのは自分だけでなく2人だった。ところが選ばれたもう1人のグレースは全く関心のない様子で辞退してしまう。

今更かもだけど、多様性が重視されるようになると、人は人への思いやりをより強めて言葉を選んだり、関係を深めたりしていく必要があるんだよね。

もっと一人一人が互いの気持ちを尊重しあって接することが大切だとこの映画は教えてくれる。

いかなる人でも、側からはその人がどんな心の傷や重荷を背負って生きているかは分からない。

ヘンリーは、ライターを目指す青年で、もともと言葉への意識は高いし、繊細な心を持っているのだけれど、この手の映画では、定番の「あー、やっちゃったかー」って言う主人公の行動があんましないんだよね。これが自然なのかどうなのかは別として、たぶん脚が不自由なグレースには何か事情があるんだろうなと言う前提でいつもグレースに接して優しい。

それでもグレースの心の傷は深過ぎた。彼女の心はガラス細工の様。

過去に囚われて、前へ進もうとしても、後退りしてしまうグレース。そんな彼女が一歩踏み出すのをヘンリーは辛抱強く優しく待っている姿が大人びている訳でもなく、初恋の彼女を前にしてどうしたらいいのか分からない彼のおどおどした感じも初々しくてせつない。お互い思いやりながらも傷つけあってしまうのがとっても痛々しい。

まぁ、もしかしたら大人でもできないほどお互いを思いやってるかもしれないなー。彼らよりガキな大人は沢山いる。わたしもそうかも。

これがティーンの恋愛物としてどうかは分からないけど、なんだか色々響くものがあった。

「10代は宙ぶらりん。もっと自分を出せと言われるけど、そうした矢先には引っ込んでろと言われる。大人はそんな10代の宙ぶらりんな状態をなんとか生き抜くことができた傷ついた子供」

確かに、大人って何?って考えた時それも一理あるなって思った。

「愛は、化学反応。生まれては消える。失恋も同じ」

加えて言えば、愛とかだけでなく化学反応を沢山してきたのが大人なんだろうね。

今の時代の10代の子達は、私たちよりも多くの情報の中で生きていて、何を信じるべきかとか、色々大変だろうな〜なんて言うことも思う。

じんわりめっちゃ痛いな〜って思った台詞。

Why do you kiss me like that? Like you are in love with me….
(どうしてそんな風にキスするの?まるで僕に恋してるみたいな…)
と言うヘンリーに対して、グレースが答える。
It’s the only way I know how.
(わたしにはこれが普通なの)

うわー!美しいがなんて残酷な言葉なんだ!

痛い〜!

心に残るシーンとか台詞が沢山あった。

とても素敵な映画だった。
みゅうちょび

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