映像観し者

ビューティフル ドリーマーの映像観し者のレビュー・感想・評価

3.0
配信で鑑賞。
押井守が映画のために書いた原作『夢みる人』をもとに本広監督が不完全な状態の脚本を作り、現場の即興劇で完成させた実験的な作品。
即興劇だと知らなくても察せられるくらい芝居が緩く、普段観る映画にはない芝居の時間が流れる。
大学生が謎の映画脚本を映画にしようと悪戦苦闘する物語だが、この脚本が完全に押井守のビューティフルドリーマー。
アニメであるシナリオ、しかも押井演出の独特な画面作りを、超低予算の映画同好会がどうにか実写化しようとする様はなかなか微笑ましくて面白い。押井の不思議なレイアウトを実写で表現した学生たちが「なんでこんな絵になるの?」「わかんない」と困りながら進めるのもビューティフルドリーマーを観ていれば笑えるかも。
この悪戦苦闘はそのままクリエイターがその活動の最初期で、憧れの作品から学ぼうと作品の意図や技法を盗むためのたうち回る戦いそのものなのかもしれない。
傑作映画を受け継いで別の誰かが次の監督になる、という映画が延々続けてきた連続が美しい夢なのだ、というとちょっとカッコがつく気もする。

とはいえ緩くて長いので人におすすめはしないけれど、かっちり作られた映画ではない、別の温度感の映画もたまにはいいんじゃないでしょうか。
映像観し者

映像観し者