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ザ・ファブル 殺さない殺し屋のsomaddesignのレビュー・感想・評価

5.0
ウツボの印象凄すぎて、ファブルの活躍が…
オクトパスのタコ社長が陰鬱な物語の救い

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裏社会で都市伝説のように怖れられる謎の殺し屋ファブル。1年間誰も殺さず普通に暮らすようボスから命じられた彼は、素性を隠して、相棒ヨウコと兄妹を装い暮らしている。
一方、NPO代表として街に潜む危険から子供を守る活動をする男・ウツボ。だが裏では詐欺・誘拐・殺人なんでも行う裏社会の住人だった。かつて家出少女を食い物にする売春組織を率いていた頃、幹部の実弟をファブルに殺され、自身は命からがら逃げ果せた過去を持つ。

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何度目かの公開延期を経て、やっと見れた😆

邦画では今や貴重なアクション映画。岡田准一のキレキレのアクションはモチロン、動きの根拠になる体づくりまで、彼のストイックぷりに感服しちゃう。
前作の反省を踏まえてか、ちゃんとご尊顔が見える状態でアクションしてくれてるのがありがたい。せっかく本人が演じてるのに、覆面してちゃ勿体ないものね。

ウツボ編は陰惨なストーカー事件や盗撮被害から、大人になりきれなかった子供たちの成れの果てを描いてて、暗く重い話が続く。それだけに原作にないカーアクションや、団地アクションシーンが大盛りでバランスとったか、全体的に軽快な娯楽作として超たのしかった!

物語の中心にいて、今作の実質的主人公・ウツボを演じた堤真一。原作だともっっとヌラヌラとした脂っこく纏わりつくような野心と邪心の七三分けのオッサンで、狡猾に他人を操るキャラクター。堤真一の飄々とした佇まいと裏腹なド悪党っぷりが良かった。
どこか諦観してる人でもあって、人にも社会にも何の期待も思い入れがないがゆえに、どんな残虐な行為にも躊躇がない。多分弟の仇討ちも「ついで」くらいの動機だし、詐欺や恐喝で金儲けするすることすら実は執着がなさそう。金が欲しいわけじゃなくて、悪いことが得意だからやってるだけな雰囲気。マジ怖い。

ヒロイン・ヒナコこと平手友梨奈の不幸が似合う佇まいが良かった。ミステリアスでありながら、心の底に燃えるような感情を秘めてる感じがして、決して現状を諦めて受け入れてはいない。流される事を良しとせず、苦しくてももがく姿がハマってた。
ウツボの商売道具でありながら性処理係もやらされる。直接的な表現こそないものの、ウツボが足の間に顔を埋めるシーンはマジキモくて良かった。

木村文乃の妖艶かつ無敵っぷり。前作では割愛されてしまった、有能な殺し屋一味の一員って要素が、今作だと思う存分発揮されてて嬉しい。エロい上にいちいち理にかなって見えるアクションがすごいし、ちゃんと体格差や力の差を計算に入れてなお圧倒してく様がカッコいい。

中盤は暗い会話劇が延々と続くので、終盤の団地アクションや山奥の決闘…クライマックスのカタルシス。原作にない要素だし、団地内の格闘もテンポがいちいち早い。殴る蹴る動作の前にイチイチ叫んだりしない。


原作だとウツボ編の発端となった貝沼君だったが、今作だと割と空気。物語からの消え方も雑で残念だった。「大人になりきれない大人」「子供を守ることで子供自身は弱くなる」って寓話性を象徴するキャラだっただけに、もう少し幼児性が見えて欲しかった。

あとパンクブーブーの人の演技が…えーと、コントのそれだった。彼のシーンだけ急に虚実の皮膜が厚くなるっていうか、嘘のハードルが高くなる。「ごっこ」の世界になってしまうのが残念。役柄的にあえての起用としても、貝沼くん同様雑に物語から消えるので、それならもっと違う人でもよかった気がした。

前作から引き続きエンドロールのレディ・ガガ謎。2度目となると様式美すら感じられてきた。

余談)
ジャッカルの劇中ドラマ。あれの完成品を見てみたい。
何がどうなったら、あの結末であのセリフにたどり着くのか。DVDの特典映像でも構わないから、一度ちゃんと見してほしい。そして宮川大輔のジャッカルは今作でもサイコーに好きだった。橋本マナミの丁度いいお色気女優感も。
……と思ったら、YouTubeの松竹チャンネルでジャッカル富岡主演ドラマ「傷だらけの裸」が公開されてた! ちゃんと作っててどうかしてる!

34本目
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