ドイツのこじんまりとしたスーパーヒーロー映画。
生まれ持った超人的な力のせいで幼少期に大惨事を起こしたウェンディは長年親身になってくれているスターン博士のケアを受け、心の安定を保つべく投薬治療を続けながら夫と一人息子の3人で裕福ではないが幸せに暮らしていた。
ある日、パート先のゴミ箱を漁っていたホームレスに本当の自分を隠すための薬を飲むのをやめろと告げられる。
訝しみながらも飲むのをやめてみたところ、自分にまるでスーパーマンのような力が備わっていることに気づく。
マーベルやDC系に代表されるスーパーヒーローモノだが異星人や古代の神々など大仰な設定を伴わない小規模な作品。
また前半は痛快コメディなテイストだが後半から能力の使い道や非能力者との共存の難しさなどに焦点を当てたややダークな方向にシフトしていく少し奥行きのあるシナリオで意外にもちょっと考えさせられる内容だった。
やや大人向けなのかな。大切な人は護ることができ、未来への希望もあるが少しビターな結末からもそう感じる。
メジャーなスーパーヒーロー作品に対するアンチテーゼとも言えるような描写やセリフもチラホラみられる。
本来の意図を汲み取らず現実逃避と劣情からスーパーヒーローにのめり込む冴えないオタクがいざ力を手にしてみると幼稚で利己的なことにしか力を使わない小悪党そのものになってしまう流れはとても印象的だった。
潤沢な予算によるド派手な演出や広がりのある設定を持ったスーパーヒーローモノ好きにはショボく思えるだろうが個人的には王道の大作モノよりこじんまりとしていてもこういうちょっとハズした亜種的なスーパーヒーローモノが好きなので満足。
邦題はちょっと趣旨から外れているかな。原題は自嘲気味にどストレートなんだね!
レトロとモダンが混在したエレクトロニックなサントラとエンディングで流れるANTIFUCHSのインダストリアル気味なヒップホップ曲がとてもいい。
そういえばウェンディ、サラッとATM強盗してたけどあれはお咎めナシなのか?