アラシサン弐

ベイビー・ブローカーのアラシサン弐のレビュー・感想・評価

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
4.0
是枝監督がまたしても家族の在り方に対して新しい回答を提示してきた。

この作品では、赤ちゃんを産んだ人、捨てた人、預かる人、育てる人、売る人、買う人、さらにはそれを見る全くの外部の人にまで赤ちゃんと「家族になる可能性」が与えられていて、監督が通底して描く「家族に血の繋がりは必要か」という問い掛けの範囲としては、最も広いスケールなのではないだろうかと思う。

そういった可能性を与えられた人物たちが、自身の生い立ちや立場を含めて親になる選択と葛藤していく一方で、既に親である人や、親を名乗ってる人が、色んな理由で親という立場から脱却させられていくのが何とも監督の意地悪なところ。

冒頭のとある人物の「捨てるくらいなら産むなよ」という台詞、全くもって同意見なのだが、鑑賞後にはそれだけではないよな、という考えるスキを与えてくれる。

捨てた人には子供を産まざるを得なかった事情があり、売ろうとする人には金を工面しなくてはいけなかった事情があり、もちろん買おうとする人にもあり、そもそもベイビーボックスなんてものを設置しなくてはならない社会自体にも事情がある。

結果に対して表面だけで評価されてしまうことが多い現代で、それぞれの事情と向き合った上で判断がされることの大切さに気づかせてくれるし、結果的に「捨てるなら産むな」という台詞を言った人が、最も前に進んだとも言える結末には希望を感じる。

正直、母国語ではない故のテンポの悪さや、万引き家族のような怖いくらいリアルな演技合戦は減退している印象は否めないが、テーマが持つスケール感の広がりは驚異的なものを感じる。
このテーマを一歩先に前進したことを経て、また日本語の演技合戦も観てみたい、そんな欲が出てきてしまった。
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