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劇場版ポルノグラファー プレイバックのharrietのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

極上の恋愛映画であると同時に、木島の文学の着地点がしっかり描かれた堂々の完結編だった。だから本作にはハッピーエンドが二回ある。

(以下、微ネタバレ)
この映画に先駆ける『ポルノグラファー』と『インディゴの気分』において、木島は、純文学作家としても官能小説家としても書けないことの辛酸をなめてきた。そんな経緯もあって本作においては、幸福と文学の両立不可能性におびえ実家にも恋人の久住にも向き合えずにいる。

その木島が葛藤の末ようやく自ら久住に手を伸ばし愛を告げるところが一つ目のハピエンだ。その後久住と共に実家へ踏み出し、文学の師からの「幸福と寂しさは裏腹で文学と両立しない訳がない」という意味の言葉を思い出すことで新たな地平に至る。晴れ晴れした顔で著作を書き上げたところで圧巻の大ハピエンを迎える。

かつて木島は、出版社と決裂し純文学を失った時、城戸によって官能小説を書く場と師匠を与えられた。その後再び書けなくなった木島は、久住から俺のために書いてと求められて再び筆を執る力を得た。いまその小説が昔の編集者の目にとまり、再び純文学を書こうとしている。

木島に憧れ嫉妬混じりの善意で手を差し伸べた人間と、木島のミューズとなった人間と、どちらも現在の木島の作家人生に欠かせないパズルのピースだ。男達の苛烈な衝突も暖かな恋の美しさも全て織り込んだ作家の創作の物語こそがこのポルノグラファー三部作の魅力の一つであり、原作x演出x演技者の化学反応が生んだ稀代の傑作と言えるだろう。
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