青二歳

蒼い記憶 満蒙開拓と少年たちの青二歳のネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

この監督…相変わらず政治イデオロギーを隠さない方針なんだろうが今作はその辺控えめでまだ楽!(๑•̀∀•́ฅ ✧「伝えたいことが止まらない!」としても、イデオロギーは鬱陶しいからせめてこのくらい抑えた方がいい。
満州引き揚げのお話。満蒙開拓青少年義勇軍として満州に渡り開拓に従事していた少年たちは終戦も知らず、ソ連の侵攻、中国人の襲撃から逃げまどう。物語の前半は44年に満州に行くまでと実際の開拓が描かれる。後半は45年8月9日から始まるソ連軍の南下の中、中国人やソ連軍を避けて荒野を逃げまどう悪夢の旅路と、主人公の少年が強制収容所からの脱出を試みるまで…

気になったこと。学校から満蒙青少年開拓義勇軍を応募するよう呼びかけがあるんだけど、44年でもやってたという点。この頃だと農業がらみなら、本土決戦に備えて少年たちは“食糧増産隊”を組織していたのかと思ってた。
あと気になったのは、劇中で主人公の父が教師時代に“農民”というんだが、普通"農民"っていうか…?米どころの親類に農家いるけど、“農家”って言うけどな。戦中は農民って言ってたの?なんかすごい江戸時代っぽい。自称で“百姓”と言うのは聞いたことあるけど、自分たちを"農民"なんて言わないなー。


「ソ連が女狩りに来るから殺気立っていた…」とかサラッと言うけどすごい事だな。女狩りって。でも大陸半島からの引き揚げでどれだけの女性がレイプされたかは記録に残っている僅かでも忘れてはならんと思う。
一方で「我々を守ると嘘をつき、真っ先に逃げ出した日本軍」「頼みにしていた日本軍に見捨てられた」この手の映画だと良くあるんだけど、戦争批判と日本批判だけはサラッと流さず印象的な演出・丁寧な説明台詞でやるんだよねぇ…ヽ(´o`;
製作者側に某政治団体の人がいるから、まぁイデオロギーを隠せないんでしょうけれど。なんせこの手合いの特徴は「伝えたいことが止まらない!」なので。
でも、彼ら開拓団の引き揚げでは、助けてくれなかった日本軍にも憎しみがあるだろうけど、他に収奪に来た中国人や女狩りをするソ連軍にだってひどいことされるのは同じなんだから、こう言うことはイデオロギーを置いといて、同じ温度感でやった方が完成度が高くなるし、伝えたいことがより伝わると思うんですけどねぇ。その方が助けてくれた中国人もいたというシーンもより印象的になると思う。
ともあれ今作はそういうイデオロギーの主張は珍しく少なめで、いい演出も沢山ありました。いや結構政治的な主張も盛り込まれてるんですけど、このくらいならドラマの邪魔にならない。“ガラスのうさぎ”とか本当疲れたし…あれに比べれば…(ヽ'ω`)ゲッソリ

"女狩り"に苦しんだというソ連軍に包囲されていた村のシーンは印象的だった。自決組、脱出組、切込み組に分かれて明日のソ連軍襲撃を待つ村。演出では開拓団教師の死だけを描いているに留めているけれど、要はほぼ全員死んだという事で…
つらい。また強制収容所も中々ひどい状況でつらいけど、こちらはえぐい演出は控えめでしたね。十分ひどい状況なんですが、演出はクドくない程度に抑えています。ここはもっと尺とっても良かったとは思いますが。
ただサラッとした演出も良くて、特にラストシーンは、その先のさらなる過酷さを描かないというのは良かったです。今作は長野の満蒙開拓団の会が中心のようですが、今日本に帰国できた生存者もいると分かっているので、主人公の少年が無事だったか帰国できなかったのかは不明とはいえ、この少年の歩く線路の先が明るいものであることを願う良い終わり方だったと思います。
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