ヒマラヤ近いインド山村の、とある小さな家の中を舞台としており、と、聞くと演劇的で空間的魅力はないのかと思いきやそんな事を一切感じさせないほどの傑作。赤坂氏の『フレームの外〜』でも言及されている通り、正にフレーム外映画の極地のような出来。ビックリした。

フレーム外の軍隊やら騒ぎやらの音、雨季の雨の音が映画を豊かにしているのは勿論、その音自体も異様な怪鳥音だったりと何かとぶっ飛びであるし、外界との唯一の接点であるドア、窓から吹き込む風だったり、それによってはためく衣だったりも魅力がある。また画面に突然人間が現れるのも異様で好き。

一方でフレームの中は中で人の顔の向き、立ち位置の妙でバッチリと決まっている。
お話は、幼なじみの男が詩人となり主役の女は彼をささえ続けていたが彼が都会にスカウトされ田舎の山村を離れてしまい…というもの。
途中で家のリノベにやってくる都会からの使いコンビがいい味を出していた。
この2人の会話が妙にミニマルテクノ気味でまたさいこー。

• #2021Nov.riazor511

今まで観た中では一番分かり易いマニ・コウル。カメラは常に田舎にある家の中での会話劇だけを捉えているが、人の出入りは頻繁にあり、物語は地理的にも時間的にも広がりを持っている。ストーリーは徹底的に家の中で展開され、誰が出入りしようと決して家の外にカメラが出ることはない。せいぜい開かれたドアや窓から見える景色と家の外観ショット、聞こえてくる騒音だけが外の世界の存在を直接体感させてくれる。そんな状況が、主人公Mallikaの囚われている小さな小さな世界（たまの来客で外の世界を知る）とも合致している美しさ。

詩人のKalidasに「えもいわれぬ感情」を抱いている主人公Mallikaは、母親が彼を嫌っていることを知っている。ある日、家の中に迷い込んだヤギを可愛がっていると狩猟中の男が「My property」だから返せと言って家に入り込んでくるが、詩人は「山の財産だ」といってヤギを抱えて家を出る。その時に彼が実は評価されている有名な詩人だと知るが、同時に彼がその受賞を断っていることも知る。母は頑なに無関心で、自分の家の仕事の話しかしない。そのすれ違いが面白い。結局は自分を置いてUjjayini（地名でもあるが、勝利した者、の意）へと旅立っていくKalidas。取り残された母娘の意地とプライドの物語。ニューシネマやフリーシネマのインド版的な？

お偉方が来る前に家の中を点検しに来る2人の男の掛け合い（家具をどう移動させるか、で毎回意見が食い違いすべてRemainになる）が急にコメディで、全く予期していなかったので滅茶苦茶に笑ってしまった。

2023 2/2 フランスの映画館で観た。眠気が襲ってきて途中で寝てしまった。もう1回観る予定。何回か観ないと理解できない作品。女性の背中が色気が出てた。
2023 2/10フランス パリの映画館でもう1回観た。全編観た。時間がゆっくりと経っていく不思議な作品でほぼ台詞は語りが多いが飽きなかった。不思議な作品に出会えてよかった。