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Tokyo Noise(原題)の消費者のレビュー・感想・評価

Tokyo Noise(原題)(2002年製作の映画)
3.7
・ジャンル
ドキュメンタリー

・感想
ビル群、文明、人混みで溢れ返った猥雑な都市としての東京をノイズミュージックやサウンドコラージュを背景に各界の専門家達のインタビューと共に紐解いていくアート性高めのドキュメンタリー作品
ドキュメンタリーなのであらすじは割愛

ノイズミュージックにフォーカスを当てた作品かと思っていたので予想とは大分違ったもののこれはこれで面白い内容だった
都市と自然、人間と機械、孤独と雑踏、伝統と科学の発展、モラルと歪さ
様々な二面性の間で生まれる混沌や時の移ろいがもたらす破壊と再生
そういった観念が入れ替わり立ち替わり流れる雑多な分野の人々の言葉と共にぼんやりとした繋がりという形で現れてくるのが興味深い
思想や価値観、倫理観の異なる言葉が多様な光景とぐちゃぐちゃに混ぜ合わされた世界観はまさに概念としてのノイズという物を上手く体現していた様に思う
そしてそれぞれ話す内容や方向性が異なる中で没入、脱構築、無機性の中に生まれる有機性など共通している部分もある
作品その物が禅問答の様でありながらそうして考える事こそが人間の営みであり社会の本質と示すかの様な感じがまた何とも言えない

完全な美も正解もないが枠の中で本質を自ら掴み取っていく
本作が提示する“日本人の生き方”はまさしくノイズミュージックの持つ哲学でもありその奇妙な合致がまた楽しい

秀逸だったのが出演者達の中には悦に入って偉そうに講釈を垂れている様な人もいて、でもそういう人間の持つ歪さや醜ささえも受け入れる都市の混沌には作中で度々触れられるモチーフである富士山の様な寛大な神性や霊性という物も感じ取れる点
全ては相反している様で本質では繋がりあっている
そんな神道やサイケが与える気付きみたいな物を具現化する事に成功し着地させていたのが巧い

とはいえやっぱりもっとノイズミュージックをメインに扱った作品も観たいなぁとも正直思う
どっかにそういう作品も無いかな…
あとちょっと日本人という物を神格化し過ぎている感じもしてそこは少しノれなかった
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