雷電五郎

ラブ&モンスターズの雷電五郎のレビュー・感想・評価

ラブ&モンスターズ(2020年製作の映画)
3.8
地球に落ちてくる隕石をミサイルで破壊して人類滅亡を阻止したと思いきや、ミサイルに含まれていた大量の化学物質により変異した地球生物によって食物連鎖の頂点から一転、人類がヒエラルキーの最下位に転落してしまった近未来世界で、主人公のジョエルは130キロ離れたシェルターにいる恋人のエイミーに会いに行くことを決意し、暮らしていたシェルターを出る、というお話です。

設定だけですと、よくあるシェルター内での人間関係崩壊で自滅というスリラーを想像しますがそういった陰惨な展開はないので安心して観られます。また、被捕食者となった人類は当然食べられる描写もありますが、ダイレクトなグロシーンもないです。あるとしたら巨大生物が爆散するか斬られて死ぬかぐらいの描写です。

あらすじで恋愛をベースにした話かと想像してしまうかもしれませんが、ラブは本来恋愛だけをさす言葉でなく、広義の愛情について用いられる表現。旅の果てにジョエルが様々な大切なことに気づくヒューマンコメディで、一つ一つの出会いと別れを大切に描き、愛おしいものとしてジョエルの中に居場所を作っているのがグッときました。

欲を言えば、変異した生物達の間で食物連鎖が形成されている描写も欲しかったですし、何より昆虫、爬虫類、両生類といった外見がクリーチャー向きな生物しか出てこないのは残念でした。巨大化して一番厄介なのは哺乳類、鳥類の肉食獣で、多分これが入ってくると地上を歩き回る難易度は格段に跳ね上がるので、昆虫や爬虫類系だけにしたのかなと。草食生物とかもモッサリいてほしかったって気持ちはありました。

クリーチャーはあくまで化け物なんで生態がなくても気にならないんですが、生物であれば生態系が伺える描写があると巨大生物世界で小動物と化した人間の立場の絶望感がもっとよく伝わったのかなとは思いました。

話自体はとても面白くて特に犬のボーイが可愛くてニコニコしちゃいますね…ひたすら可愛いかったです。いるだけで癒されます。
ラスト近く、カニの口の中を見て肉食の生物ではないと気づくジョエルの描写は、生き残るために生物を観察することが身についた感じがあって芸が細かいなと。
ハサミが片方だけ大きかったので、ベースがシオマネキかなんかだろうけど、だとしたら砂の中の有機物をこし取って食べる生き物なので口の中に牙がない→肉食の動物じゃないって下りは生物を相手にしている感じがあってすごい好きでした。その後のガチギレ蟹制裁には笑いましたが(笑)

爽やかなストーリーなのでラストまでするっと観れる作品です。途中のスカイジュエリーとメイビスのエピソードが一番泣けましたね…亡くした家族の姿を留めた写真すら持っていなかったジョエルには久しぶりの母親の笑顔は旅の間で一番嬉しくて辛い思い出になったんじゃなかろうか。

緩急がうまく、襲われるシーンの緊張感もありますが、ジョエルが一貫して前向きなので陰鬱な気持ちにならずに観れました。

地上で生き残ってるすごい人枠でマイケル・ルーカーさんが出ていて似合いすぎてまた笑いました(笑)説得力ある!

とても面白かったです。
雷電五郎

雷電五郎