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オクトパスの神秘: 海の賢者は語るのbenikoのレビュー・感想・評価

4.8
1年間にわたる1匹の野生のタコと1人の人間の交流を映したドキュメンタリー。

海のように深く感動した。

タコの生態を知るだけのドキュメンタリーではない。人生につまずいた人間の男クレイグが海底で1匹のタコの女の子と出会い、ふれ合い、絆を深めながら自分の人生も見つめ直していくヒューマンドラマでもあった。

舞台となる南アフリカの海の ”ケルプの森” の映像はどんな作り物よりも美しく壮大で、SF映画よりも幻想的。

寿命1年(長くとも3年)のタコの一生。タコの人生の8割を間近で見て、忍耐と信頼を重ねてこそ見られる様々な姿に驚かされる。

貝を盾のように使って身を守る姿
高い知能を使ってサメと戦う姿
8本の足を大きく広げて魚と遊ぶ姿
心を許したクレイグに甘える姿

その全てが尊い。

交流はするものの野生の生活には介入せず、名前もつけず、自然のままの生き物同士で交流するクレイグと蛸の関係性もいい。人間だって自然の一部であることにも気付かされた。

本当に良いドキュメンタリーだったので、これは何か賞をもらって製作者が称賛されていないと納得できないとと思って調べたら、第93回アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞していて安心しました。

別の言い方をするならば、
蛸の女の子をストーキングする
人間の男の物語。笑

タコに興味がある人はもちろん、人生につまずいた時や落ち込んだ時に見てほしい一本。
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