真魚八重子

不都合な理想の夫婦の真魚八重子のレビュー・感想・評価

不都合な理想の夫婦(2020年製作の映画)
4.5
『マーサ、あるいはマーシー・メイ』のショーン・ダーキンが9年ぶりに監督した作品。

見栄から身分不相応な豪邸に引っ越しを決める父親。そこから家族はそれぞれに問題を抱え始め、静かに崩壊していく。経済問題や友人関係など、現実的な理由で苦悩するのだが、原題の『The Nest』の反義語的に、彼らはこの家に来てから破綻が際立ち、落ち着きを失っていく。この家も確かにおかしい。古い屋敷は鍵が自然と外れたり、息子が何か恐れを感じて一人になるのを避けたりする。
超自然とは違うけれど、何か良くない気配がある。そこに住むことで、ある家族が元々抱えていた問題が露呈し、家族の絆が壊れていく。屋敷はこの物語の象徴であり、同時に映画の神秘的な力で、ある一家の崩壊へと働きかけている。

最後は泣いてしまいそう。人類にはなんの期待を持てなくても、ひとりひとりがある一夜を苦しみ抜いている姿には、共鳴して悲しみでたまらなくなる。
真魚八重子

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