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天外者のmatchypotterのレビュー・感想・評価

天外者(2020年製作の映画)
3.9
五代友厚。

江戸の幕末から明治へと激動の時を世界を相手に商いで渡った大阪の経済の重鎮。
その彼の半生を三浦春馬が熱の籠った真っ直ぐな演技で熱く描く。
春馬さん、ホントに真っ直ぐで先を見据えたこの役所が板についてた。

頭が良いだけではなく、少し自惚れて強引でKYな感じが“ただならぬ”様相で、正しく、そのご時世の人の感性では、測れない人だからこそ、先が見えているような、主観的にも、客観的にも時代の先を生きたような人。

幕末の動乱と激動の世を描く作品はたくさんあるけど、これはこれで新鮮だった。

何が新鮮かと言うと、若い。
日本の歴史の教科書に白黒写真で髭面や禿頭で小難しい顔して写ってる日本史における豪傑達。

そんな彼らを、若いバイタリティに溢れる俳優が演じることでまた違ったエネルギッシュな雰囲気を感じられる。

五代友厚を三浦春馬、坂本龍馬を三浦翔平、伊藤博文を森永悠希。
個人的に好きだったのが、あの三菱財閥の創始者の土佐藩氏、岩崎弥太郎を西川貴教。
TMレボリューションが明治初期の破天荒な実業家。意外とキャラにインパクトがあって良かった。

そんな彼らが、どこだかよくわからない寂れた家で鍋を突きながら先の世を語り合う。
我先に我先にと、まだ見ぬ海の向こうに想いを馳せる。

そして、本当にその思いだけで、海を渡る。
当時は海を渡るにも莫大な資金が必要だったり、危険が伴ったりしただろうに、そんなリスクを厭わず、是が非でも先を見たいという想いに駆られる。

時代が動く瞬間とは、壮大な政治的な重大な決断が下る瞬間にもあるだろうが、こうして同じ想いを違った角度で見てる友と友が酒を飲みながら他愛もなく話してる瞬間にもあるんだと思えた。

要は、その覚悟と強き意思。
何が何でも日本を豊かにしたい。今のままではいけない。
それを感じている本人達が率先して動く。

五代友厚は、その思いと、貧富、身分、性別の差に関係ない万人が夢を持てる国にしたいと思って飛び込む。

それは、周りから見ればビジネスチャンスを掴んで、自分でルールを作っちゃって、暴利を貪っているようにすら見えてたかもしれないが、それはこれから先の未来のため。

彼は、死ぬときにはそんな財はなく、ただただ借金しかなかったらしい。

それほどに、自分の功績や地位や名誉、ではなく、日本の未来と、日本という国が道に迷わぬように、他国の属国にならないように、強い目的を持てるような、国民が自分の力で歩いていけるような世界を作りたいと願った。

三浦春馬の演技も、五代友厚の志も、観てるこっちも少しは何かを動かせるんではないかと思える“熱い何か”を感じられる作品。

坂本龍馬の近江屋事件が物凄くさらっと行く感じとかも、ある意味それすら歴史の1ページと言わんばかりの本当に激動の世に思えた。

この若さ溢れる明治の文明開花の最中の物語。
大変なことを乗り越えられれば、その先にきっと明るい夜明けもあるんだ、と思える。
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