幸せのさちこ

サマーフィルムにのっての幸せのさちこのネタバレレビュー・内容・結末

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

これは、勝負する主人公の物語

「好き」という気持ちを「好き」とそのまま言葉で伝えてしまうような恋愛映画との勝負

「好き」の一言が言えない自分との勝負

映画が無くなっているという、受け入れたくない未来との勝負

凛太郎は未来に帰ってしまうという、目を背けたい現実との勝負

座頭市は
病身を顧みずに一対一を望んだ平手のことを切り、涙した。
切らない時代劇は「好き」を連発する恋愛映画と変わらない。

切らない美しさはあるけれど、
それは勝負せずに逃げること。

完成していた映画をそのまま流した方が
観客に対しては美しく終わった。

けれど、

たとえ滑稽に映ったとしても、
凛太郎に想いを伝えて、未来に抗う。

それがハダシの出した答え。

そしてハダシの背中を押したのはきっと、
ブルーハワイ演じる亡くなった元カノが
次の恋愛に進むかつての恋人を許すあのシーン。

(好きになっても)いいんだよ、
大好きってしか言えないじゃん。

勝負に挑んで完成したのは、
ただひたすらに映画と時代劇と凛太郎への「好き」を詰め込んだ、見る人によっては滑稽にも映る作品『武士の青春』。


そして、そんな『サマーフィルムにのって』自体もまた
様々な映画への「好き」を詰め込んだだけの青春恋愛映画。

座頭市、時をかける少女、十三人の刺客は作品名が登場するだけでなく
オマージュが随所に散りばめられている。

映画好きでなくても、
なんとなく先が読めてしまうほど王道なストーリーでここまで人を魅了してしまうのはやっぱり、「大好きってしか、言えねーじゃん!」と真っ直ぐに映画への愛を叫び続ける作品だからなのだと思う。