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サマーフィルムにのってのdeenityのレビュー・感想・評価

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)
4.2
結構好評を耳にしていたので気になってた作品。キャストも全然ピンと来ず、監督も長編一作目ということで、そういう監督のやりたいことみたいなものは全部突っ込んであるのかなって思いながら鑑賞しました。

案の定そんな感じですね。映画オタク、それも時代劇限定というかなりコアなタイプの女子高生たちが自主制作の映画を撮り始めるのだが、主役がなかなか見つからずに行き詰まる。そんな中でドストライクの人を発見するのだが、それが何と未来からやってきた男だった。

もう設定がめちゃくちゃなんですよね。本当に好きなこと、やりたいことを全部詰め込んだくらいの脚本の粗さで、タイムスリップ物でここまでいい加減に委ねる感じも珍しいですよね。
そもそもはだし監督の映画を見に来たのならその上映日に来ればいいだけのはずだし、未来を変える云々のリスクを考えれば無駄でしかないわけで、そういう部分が中途半端なのは正直かなりノイズにはなってるんですよね。

また、未来では巨匠と言われるはだし監督なわけですが、イマイチぼやっとしたキャラクターなんですよね。これといったこだわりが感じられないところとか。
そもそも映画好きでそこそこ通な人であるならば、まがいなりにも「武士の青春」は完成しているわけで、そこに客が集まっているなら上映を途中で止めるなんて御法度。それ=こだわりではなくて、むしろ失礼極まりないわけです。

ただ、本作に関してはまさに本作自身が処女作的な駆け出し作品であって、正直最初なんてそんなもんだったりするよなって思いもどこかにあって、だからこそとりあえず映画を娯楽的に楽しませようという意図だけは伝わってきたんですよね。

だから「おいおい、そりゃないよ」というシーンなんかも多少はご愛嬌として目をつぶってあげたくもなるし、何なら細かいことを無視したら割と笑えて面白いと感じられて。
脇を固める連中も耳だけ異常にいい補欠とか時代遅れヤンキーとか老け顔高校生とか、そういう連中を仲間として取り入れ、何なら自分たちの呼び名とか背景が感じられていいですし、主人公達とは対照的にキラキラ青春映画に没頭する映画部集団とか、そこも最後には手を取り合っちゃったりとかして、とにかく細部にこだわるのではなく作品として楽しんでほしいという思いが感じられたのでよかったです。

そういう愛があるからこそ、未来の問題点は映像の時短化。長時間スクリーンと向き合う時間も集中力もないんでしょうね。
これは思いきり現実を揶揄しているわけで、そうならないためにも少しでも楽しんでもらえる映画が作られる世界であってほしいとしみじみ思いました。
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