みんな大好き「映画とは何か」系メタ映画。実質TENET
・数学的思考を踏まえた内容になっているのが痺れた。極限まで小さな変化(limit)から生じる「差異」を読み解くことで、人生の意味を理解しながら、極限まで小さな変化の「総和」(インテグラル)によって年をとっていく。
→ 人生という不安定な関数の本質を「微分積分」によって掴むお話。「ハプニング」とほぼ同じテーマ
・「アンブレイカブル」でサミュエル・L・ジャクソンが全身複雑骨折を負う場面がシャマラン映画のマイベストシーンなのだけど、今回も似たようなことやっててほっこりした。あの洞窟の下りかなり好き
・時間芸術として映画はひたすら前に進む。時間の不可逆性が割らないカットによって強調され続けるが、時制の入れ替えが一度だけ行われ、「物語」の秩序が回復する。それをぼんやり見落とすシャマランが最高(フラッシュバックによって秩序が回復する映画と言えばシックスセンスでもある)。
・過去を見る学芸員と未来を見る保険屋が、かなりの荒療治で「今」を取り戻すが、時すでに遅し。生きる時間が奪われる、その重みが若い人にとってより切実な問題なのは、コロナ禍で誰もが知っているところ
・黒人差別、アジア人差別、今の美に囚われたトロフィーワイフ。とりあえず今の社会の縮図を放り込んどけ、という感じ。キャラを強く色分けすることによる寓話性の強調。レディインザウォーター味があった。
・サスペンスの見せ方は相変わらず一流。基本がちゃんとしているから、露骨なヒッチコックオマージュもどんどんやってくれ、という気持ちになる。